ナラ、カシ、シイといった樹木が集団で枯れてしまう「ナラ枯れ」という現象がある。1930年代に鹿児島や宮崎など比較的南の地域で報告されていたが、80年代までには兵庫、福井、新潟で確認された。発生は散発的であり、また被害も長くは続くことは無かった。しかし、発生範囲は次第に拡大し、京都や長野、秋田でも確認された。昨年までには23府県に広がっていることが各地の緩急機関の調査などでわかった。ナラ枯れの原因はカシノナガキキクイムシ(カシナガ)という体長約5mm程度の虫が原因である。このカシナガは繁殖期の夏になると、幹に穴をあけて侵入する。その際にカシナガが持ち込んだ糸状菌であるカビの1種も侵入する。この菌が木の細胞を殺してしまい、木の体液である樹液の流れをくい止めてしまう。こうなると、木は1~2週間で枯死してしまう。カシナガは太い木を好むが、炭や木材として利用されることが減り木材が伐採 されずに大きく育ってしまったり、公園整備などにより太い木が多く残ったことが原因とみられている。また、温暖化により活動可能範囲が広がったのも一因との指摘がある。 森林総研では、「おとり木」という手法を採用し駆除を進める方針である。「おとり木」とは殺虫剤を注入した木にカシナガが好む木のにおいや、フェロモンでおびき寄せる手法である。森林総研では森林のどの位置に何本設置すれば効率的なのを実地研究を行う。さらに、被害地の木の種類、気温や標高、降水量などのデータを元に発生地を予測する手法の開発も行う。