東京都千代田区にある皇居の吹上地区にある吹上御苑。その大部分は森林となっている。江戸時代の初めには武家屋敷が並んでいたが、1657年の明暦の大火により全焼。その後、幕府の財政難や江戸城への類焼を防ぐために日本庭園として整備される。明治維新後には荒れてしまうが、天皇が江戸城に居住するようになると、庭園が再建が進み、ゴルフ場も建設された。現在の多様な森となったのは1937年に昭和天皇の「なるべく自然のままに」とのお気持ちをうけて庭園的な管理をやめゴルフ場の使用も止めたことによる。自然がそのまま残された吹上御苑にはスダジイ、ケヤキ、イチョウの巨木が茂る。5月と9月には自然観察会が開かれ、初回は300倍以上の応募もあり人気の行事となっている。しかし、この森も崩壊が進み衰退に向かっていると国立科学博物館名誉研究員の近田文弘さんは語る。巨木の寿命が尽きると、イイギリやカラスザンショウという植物が侵入してくる。巨木となるスジダイよりも成長が早く、さらに他の樹木の生長を邪魔する。このことから近田さんは「ゴロツキの木」と名付けた。宮内庁庭園課長の上杉哲郎さんは「30年後にはゴロツキの木が並ぶヤブになってしまう」と、皇居の森の管理方針についての提言をまとめた。宮内庁ではこの提言を実現させるために皇居内での詳細な植生調査を実施している。また、この調査を通じて皇居の杜で集めた種子を、東京の緑化に役立てるプランもある。お台場南の2016年に開園予定「海の森」は趣旨候補先である。