林業を取り巻く状況は厳しく、木材価格の低迷や後継者不足など業界全体でかかえている問題は多い。この問題への取り組みが各地で行われ、林業再生への後押しとなっている。古くから杉やヒノキの産地として知られている吉野は奈良県南部の山間部にある。国内産の割りばしの8割は、実は吉野の木材で作られている。しかし、中国製の安い割りばしに押されて競争力は低下。産地では過疎や高齢化による後継者不足という二重苦である。そこで南都銀行は吉野山のヒノキや杉をブランド化によって打開しようと「Yoshino Heart プロジェクト」を2008年に始めた。割りばしの袋に広告を付けることで販売価格を抑え、コンビニ大手であるローソンに約14万膳を納入した。この活動は林業支援の新しい方法と注目され09年7月にはNPO法人を設立。さらに今年10月からはファミリーレストラン「ロイヤルホスト」のランチョンマットに吉野産木材が使われ、収益の一部は植樹にも利用されている。また、宮崎県では杉から出る樹皮を、土壌改良材として新たな活用方法を見出した。杉の樹皮は産業廃棄物として扱われ焼却処分となる。この処分費用が林業関係者の重荷となっていた。地元の内山建設がこの事を知り、事業化に取り組んだ。試行錯誤の末に樹皮を細かく砕いて土と混ぜ、半年ほど熟成させ、適度な保湿性と排水性がある土壌改良材「ひむかいバーグ」を開発した。60件近くの施工実績をもち、培養土として園芸向けにも販売される。樹皮を廃棄するのではなく、新たに土壌改良材としての利用が進めば、県内の林業関係者の普段が年にして10億円以上は減ると見込まれる。岐阜県の飛騨地方では、林業の振興を目指して地元の森林組合と建設会社が共同でプロジェクトに取り組んでいる。森林組合は人手不足に悩んでいた。一方、建設業者は公共工事の削減により受注減に悩まされいた。両社の思惑が一致した形である。森林組合としても、建設会社の従業員と重機によって木材を運ぶ作業路の整備が進むなどメリットが大きい。しかし、「目利き」という商品になる木を選ぶ技能や地権者との交渉などはすぐにこなせるわけではなく。「生半可な気持ちでは成功しない」と県建設業協会の美濃島浩事業課長は語る。