標高3千メートルを超える秘境の山の斜面で、根元を切断されたばかりの巨木が横たわっているここは、中国雲南省北西部のちこ湖のほとりである。自然保護区に指定されているところで不法伐採があとをたたない状況である。今、イチイの一種で「紅豆杉」、これには抗がん剤として利用できる成分がふくまれているということがわかり、特別な価値があり高値で取引されるため、乱伐されている。中国当局の90年代の調査によると、雲南省には全国の紅豆杉の半数を超える350万本あり、その1/3はちこ湖一帯を含む北西部に集中している。また、雲南省は中国の「生物多様性の中心地」とも呼ばれ、中国に自生する植物の半数にあたる15000種が集まっている。乱獲などで数が減っている植物も3000種にのぼるという。利用と保護を両立させる工夫が必要と中国科学院昆明植物研究所の教授は話す。