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- ID:
- 23246
- 年:
- 2012
- 月日:
- 0120
- 見出し:
- 長時間露光撮影なのにブレない人の不思議!満潮 "High Tide" という幻想的な写真展
- 新聞名:
- ライフハッカー
- 元URL:
- http://itlifehack.jp/archives/6612360.html
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 地球には不思議だが、美しい自然現象がいくつもある。そのひとつが、潮の満ち引きだ。「満潮(みちしお)」は「High Tide」ともいう。海水面が上がりきった状態を指す満潮は、月や太陽などの天体によって地球のまわりの重力場に勾配が生じることで発生する。
地球上の生き物の営みにも影響を与える幻想的な現象だが、そんな満潮をテーマとしたAlejandro Chaskielberg写真展 "High Tide" が、東京・銀座にあるリコーフォトギャラリーRING CUBEにて、2012年1月18日から2月5日まで開催中だ。
今回の写真展は、ロンドンの世界的にも著名なギャラリーMichael Hoppen Contemporaryとのコラボレーションにより実現した。Alejandro Chaskielberg(アレハンドロ・チャスキエルベルグ)氏にとっても日本における初の個展となる。
RING CUBEは、今まで見たことのない写真を展示したいというコンセプトのもと、アレハンドロ・チャスキエルベルグ氏の作品を招致したという。
■革新的な技法は実験から生まれた
今回の写真展 "High Tide" は、ブエノスアイレスにあるパラナ川のデルタ地帯を中心に撮影されている。
"High Tide" というタイトルについてアレハンドロ・チャスキエルベルグ氏にうかがってみた。
「私は夜に写真を撮るので、月がまず水に影響して、水が満ちてきて、風が起こったりします。この水の動きと月のイメージというのが重なって、満潮(High Tide)と名付けました。」
写真展の作品について語る、アレハンドロ・チャスキエルベルグ氏
High Tideでは、通常の撮影とは違い長時間露光で撮影する技法が用いられている。長時間露光の特徴とこの技法にたどり着いた経緯をうかがった
「写真の表現というのは、いろいろと変化しているので、それに伴っていろいろと実験をしていかなければならないと考えていました。今から5年ほど前、夜に長時間露光を試してみたところ、非常にシャープで美しい写真が撮れました。また、昼に比べてライティングを自分の思うように調整できると感じたことから、長
時間露光で撮影する作品が生まれました。」
通常、長時間露光すると、人物のように動く被写体はブレてしまうが、アレハンドロ・チャスキエルベルグ氏の作品では、ほとんどブレがない。なぜ、ブレずに撮影できるのだろうか?この疑問をぶつけてみた。
「被写体となる人は、6分間くらいは動かない状態をキープします。うしろから満月の光に照らされるので、顔がどうしても暗くなってしまいます。そこで正面からフラッシュライトのように強い光源を使って、4~5秒の間、顔の撮影をします。こうすると、今回の作品がとれるわけです。」
長時間露光が印象的な作品ばかりだ
展示されている作品には、単に美しいだけでなく、不思議に思えるものも多くある。
たとえば、巨大な丸太を持った人物は、撮影時にずっと丸太を持ち続けていられるわけがない。アレハンドロ・チャスキエルベルグ氏によると、丸太の重さはおよそ80kgあり、この作品はちょっとしたトリックを使って撮影されているという。そんなトリックを想像しながら作品を鑑賞するのも楽しい。
丸太の重さはおよそ80kg 長時間露光でどうやってブレずに撮影したのだろうか
被写体となる人物は、どのようにして選ばれたのだろうか。
「1ヶ月前くらいから、被写体となる人を知るようにします。何回か訪問して友情に近い人間関係を築きます。それによって、夜中に写真を撮らせていただくことができ、何分間も動かないでもらえるという状況が作られるわけです。」
気になる撮影時間だが、1ショットにつき約2~3時間で撮影するという。昼間のうちに撮影場所を選定し、インターネットであらかじめ月が昇る位置を把握しておくそうだ。そして夜になったら、本番の撮影だ。月の位置がずれている場合は、月が目的の位置にくるまで、2~3時間待たなければならないというから、写
真家も被写体も大変な作業だ。
被写体のバックから照らす月が幻想的な作品を演出する
今回の写真展でパラナデルタを撮影場所として選んだのは、何故なのだろうか。
「パラナデルタは、子供のときから知っていた場所です。都市に近いところは観光地になっていますが、都市から離れると、作品のような湿地になります。不思議な雰囲気のある場所であり、この地域に住んでいる人たちのドキュメンタリーというものは、今までありませんでした。ブレノスアイレスの都市から非常に
近く、写真ではあまり撮られた場所ではなかったということです。
来場者は先に進むまで、どんな作品が次にあるのかがわからない
次の作品の期待感が高まる、RING CUBEの丸みを活かした展示法だ
床には、アレハンドロ・チャスキエルベルグ氏からのメッセージが随所にある
■今後の作品と活動
今後の作品についてうかがってみると、2つのアイデアがあるという。
ひとつは、「ラテンアメリカの顔」というテーマ。ラテンアメリカを旅行してポートレイトを撮るという。
もうひとつは、「アマゾン川」というテーマ。こちらはアマゾン川に住むコミュニティの人々を撮るというものだ。
今後の作品と活動について語る、アレハンドロ・チャスキエルベルグ氏
最後に来場される日本の人へのメッセージをうかがった。
「私の作品を見ることで、時間を忘れるほど楽しんで欲しいです。プロの写真家にも、ぜひ、私の実験的な写真を観てもらいたいです。」
Alejandro Chaskielberg写真展 "High Tide"の作品は、いずれも息をの飲むほど美しい幻想的なものばかりだ。
水辺に住む人々の生活が美しく構成され描かれている作品は、見る人に斬新な写真体験を提供してくれるだけでなく、大きな丸太を持った人、1枚の写真で焦点が2つあるなど、大きな謎も投げかけてくれる。
入場は無料なので、写真が好きな人は銀座に足を運んでみては如何だろうか。
今回展示している28作品については、館内撮影も可能で、RING CUBEで販売も行う。
●アレハンドロ・チャスキエルベルグ氏 プロフィール
Alejandro Chaskielberg、1977年ブエノスアイレス生まれ。
2011年、「ソニーワールドフォトグラフィーアワード」で「フォトグラファーオブザイヤー」、「ピクチャーズオブザイヤーインターナショナル」で、「ベストラテンアメリカンポートレイト」を受賞。ニューヨークのYossiMilo Gallery、ロンドンのMichael
HoppenGalleryでの個展を成功させるなど、今世界が最も注目している若手写真家の一人。
●Michael HoppenContemporaryとは?
ロンドンにある世界的著名なギャラリーMichael HoppenGallery内に2000年に新設されたギャラリー。ロンドンを始め、日本、アメリカ、オランダなどの国々における著名作家や新進作家の作品を世界に発信している。
●業界著名人マグナム・フォトメンバーマーティン・パー氏からのコメント
“チャスキエルベルグのポートフォリオを見て、彼が類まれな才能を持った新しい作家だと確信するまでに時間はかからなかった。あのような作品をそれまでかつて見た事が無かったし、新進作家であそこまで円熟した作家はほとんどいない。”マーティン・パー
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