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- ID:
- 25260
- 年:
- 2012
- 月日:
- 0913
- 見出し:
- 岩手県・陸前高田「奇跡の一本松」切断
- 新聞名:
- 河北新報
- 元URL:
- http://www.kahoku.co.jp/news/2012/09/20120913t35014.htm
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 12日行われた岩手県陸前高田市の「奇跡の一本松」(高さ約27メートル)の切断作業は、枝葉の付いた先端部分を上から4回に分けて切り取り、クレーンで下ろすことから始まった。
大型クレーンに乗った作業員2人が午前10時20分ごろ、チェーンソーで作業に着手。先端部分の切断とクレーンでのつり下ろし作業は正午前まで続いた。午後は高さ約20メートルになった幹を根元近くから切り倒し、横倒しにして3分割した。
◎シンボル喪失思い交錯
保存に向けた防腐処理のため、陸前高田市の「奇跡の一本松」が切断された12日、周辺では数多くの人が作業を見守った。東日本大震災のシンボルの喪失を惜しむ声が広がる一方、復興の道筋が見えない中、保存に要する多額の費用には複雑な思いを抱く市民もいた。
先頭に立って保存運動に取り組んできた同市の「高田松原を守る会」の鈴木善久会長(67)は幹が切り倒される様子をじっと眺めた。「身を切られるような思い」と涙を浮かべ、「再び元気な姿でこの場所に立ってもらいたい」と語った。
長野市から訪れた無職岩佐昌訓さん(76)は「今のまま保存してほしかったが、元の場所に戻ったらまた見に来たい」と、作業の一部始終をカメラに収めていた。
陸前高田市内の仮設商店街で雑貨店を経営する小笠原修さん(51)は一本松の絵はがきを販売し、土産品として好評だった。「一本松は陸前高田に必要」と力を込めた。
今回の切断を含む保存作業には、全体で約1億5000万円を要する。
市内の仮設住宅に暮らすフリーガイド紺野文彰さん(61)は「一本松を残したい気持ちはある」と話しながらも、「それほどのお金が工面できるなら、住宅支援などに使ってほしいという声もある」と疑問を投げ掛けた。
陸前高田市の戸羽太市長は「市民に希望を与えた一本松を保存するのは被災自治体の責務。再会できる日を楽しみにしていてほしい」と話した。
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