v10.0
- ID:
- 48807
- 年度
- 2010
- 月日:
- 1122
- 見出し:
- 花粉症緩和に期待!「はるよこい」挿し木出荷へ
- 新聞・サイト名:
- 読売新聞
- 元URL:
- http://www.yomiuri.co.jp/eco/news/20101121-OYT1T00387.htm?from=navr
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 富山県森林研究所(立山町)は、全国で初めて無花粉スギとして品種登録された「はるよこい」の挿し木を来秋から出荷する。
2012年には、木材として優れた特性を持つよう改良した優良無花粉スギも出荷予定。毎春、スギ花粉症に悩まされる人は2000万人以上とされるが、富山発のスギが飛散量を減少させる第一歩をようやく踏み出すことになる。開発にあたった斎藤真己主任研究員(39)は「花粉症の方の症状を緩和する
ことに貢献したい」と意気込んでいる。
無花粉スギは同研究所の職員だった平英彰さんが1992年(当時は県林業試験場)、富山市内の神社で発見。飛散量を定期観測していた木の中に、いつまでも花粉を飛ばさない木が偶然含まれていた。日本で初めての発見だった。斎藤氏は岐阜大大学院在学中に平さんと共同研究したことが縁で、97
年に県の研究員として採用され、開発を引き継いだ。
同研究所は、神社のスギの種を採取し、研究所敷地内に植えたところ、750本中29個体が無花粉だった。この中から、成長がよく、枝を土に植える「挿し木」をすると、よく根を張る1本が、2007年に「はるよこい」として品種登録された。
はるよこいの挿し木は、240本育成され、年間500~1000本の挿し木を供給する態勢が整った。スギは県木で、都市部にも多く植えられていることから、公園や神社、学校の木などの植え替え用に出荷する考えだ。
また、同研究所は、木材として成長や材質が優れている「精英樹」にも無花粉スギの遺伝子を持つ樹木があることを突き止め、天然の無花粉スギとかけ合わせた優良無花粉スギを開発。ビニールハウスの中で集中的に種を採取して大量生産する仕組みを作り、現在は年間5000~1万本の安定生産に
向けた栽培が本格化している。12年からは木材用に5000本の苗を出荷し、14年には1万本に倍増する計画だ。
富山市中心部の飛散量と標高別の開花時期を比較した結果、標高300メートル以下で、樹齢30年のスギが飛散量に大きく影響していることも判明。これは県内のスギ人工林の約3分の1にあたり、ここに無花粉スギを植えれば大幅に飛散量が減少することもわかった。
近年は景気低迷などで木材需要が低迷しているが、ロシア材の輸出関税が高く、国・県が国産・県産材使用に力を入れていることから、今後植え替え需要が高まることが期待される。それでもすべて植え替えるには、約30~50年かかる見込みという。
無花粉スギはその後、全国で見つかっているが、斎藤氏は遺伝子別のデータベースも作成。31都道府県に精英樹と交配した無花粉スギの種子を提供し、県外でも無花粉スギの研究が行われるようになった。
斎藤氏はこれらの成果から、今年の農林水産省農林水産技術会議会長の若手農林水産研究者表彰に、05年の創設以来初めて県内から選ばれた。24日に千葉県で表彰式が行われる予定だ。米国の研究者からも問い合わせがあるほか、12年には都内で行われる国際花粉学会で研究成果を発表
予定で、富山発の技術が世界からも注目を集めている。
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