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- ID:
- 48436
- 年度
- 2010
- 月日:
- 1029
- 見出し:
- 新種のサル、食用捕獲で絶滅の危機
- 新聞・サイト名:
- National Geographic News
- 元URL:
- http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20101028001&expand&source=gnews
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 雨が降るとくしゃみが出るという独特の習性を持つシシバナザル属の新種が、ミャンマーで発見された。現地では食用として捕獲されているほか、木材の伐採により生息環境も破壊されつつある。このため、新種と確認されたばかりにも関わらず、絶滅が危ぶまれている。
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友人に教える
この新種(学名:Rhinopithecus strykeri)を確認したのは、イギリスに本部を置く環境保護団体「ファウナ&フローラインターナショナル(FFI)」の調査チーム。2010年初頭、ミャンマーの山間部に位置するカチン州で、地元の猟師から話を初めて耳にした。
猟師たちの説明によれば、サルは唇が分厚く鼻が上を向いている。雨粒が鼻の穴に入るとくしゃみする習性があるため、雨の日は頭をひざの間に挟み込んで一日を過ごすことが多いのだという。
FFIのアジア太平洋地域開発部門を統括するフランク・モンバーグ氏はこう語る。「われわれが現地入りしたのはちょうど雨期だった。サルはどこにいるのか地元の猟師に尋ねると、普段はとても静かだがこの季節になるとくしゃみの音で居場所がすぐにわかると話してくれた。捕獲するサルの数も雨期の方が
多いらしい」。
モンバーグ氏によると、その後、調査チームも発見したのだが写真を撮ろうとした矢先に逃げられてしまったという。
シシバナザル属にはさまざまな種があり中国やベトナムで確認されているが、ミャンマーで発見されたのは今回が初だ。FFIによると、生息範囲はおよそ270平方キロで、白く薄いあごひげや耳毛、比較的長い尾などに特徴があるという。(関連ニュース:希少なサメ、発見されるも食用に…)
地元の猟師たちの目当ては主にクマ肉で、サルを標的にすることはほとんどない。だが獲物に乏しいときに出くわせばその場で射止めるそうだ。ただし、猟師達の胃袋に入る頭数は限られている。絶滅に追い込む要因は他にあるのだ。
FFIによると、中国の複数の木材会社が生息域の樹木を伐採し、環境破壊が進んでいるという。樹木の根が張る山の土壌は急斜面でもしっかりと固定されているが、伐採され根が失われれば土砂崩れの危険性が高まることになる。しかも伐採量が増えて作業員が多数動員されると、銃や捕獲用のわな、
野生動物の肉の取引も増加する。
地元に住むリス族の猟師たちの話を聞いて専門家が試算してみたところ、現在の生息数はわずか300程度だという。これは、国際自然保護連合(IUCN)がまとめた絶滅危惧種に関するレッドリストの中で、絶滅する危険性が最も高い「絶滅危惧IA類(絶滅寸前)」に分類されるレベルだとFFIは話す。
それにしても、この奇妙な顔つきは解せない。上向きの鼻でくしゃみ連発、まるで猟師や天敵に居場所を教えるような進化があり得るだろうか。モンバーグ氏は、「解明には、群れを餌付けし野生環境の中で観察する必要があるが、最低でも1年はかかるだろう」と話す。 今回の調査結果は、「American Journal of Primatology」誌の10月号に掲載されている。
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