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いる。
- ID:
- 48150
- 年度
- 2010
- 月日:
- 1014
- 見出し:
- クマ生活圏に急増
- 新聞・サイト名:
- 読売新聞
- 元URL:
- http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/niigata/news/20101013-OYT8T01341.htm
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 県内でツキノワグマの目撃数が急増している。今年度は9月末現在で既に前年同期の2倍近くに達し、民家に近づく事例も目立つ。山形など近隣県で12日、クマ襲撃による負傷者が出ており、県内の目撃地域やその周辺では、住民らが不安を募らせている。(小野卓哉)
■学校、民家の周辺に
クマはこのところ連日のように目撃され、三条署によると、13日も午前8時頃、三条市飯田の同市立飯田小学校の校舎裏手や、同小から約100メートル離れた同市立飯田保育所裏手に、親子とみられるクマが出現。同小では児童142人と教職員17人が校舎の2階に避難し、授業を行った。
6日未明には、長岡市小向の民家でクマが柿の木に登っているのを住民が発見。8日夜も近くに現れ、近所の女性は「裏山の畑に足跡は毎年あるが、集落に来るのは珍しい。おっかない」と話した。
県環境企画課によると、今年度のクマの目撃数は9月末現在で209件。前年同期より96件、08年度より54件の増で、急増ぶりがうかがえる。特に中越地方で多く、南魚沼市が49件で前年の約3倍、長岡市が36件で同1・5倍となっている。
■餌求めて?
なぜ出没が増えているのか。専門家らは、クマが好物にしている木の実の不作などで餌が減り、冬眠に備える秋にほかの餌を探し求めて、集落や畑に出てきているのでは、とみる。
長岡市六日市地区の山中に9日、住民らの要請を受け市職員らと共に捕獲用わな2台を仕掛けた、猟友会長岡支部長の飯利守男さん(67)は、「これまでこの辺りでクマが出たことはない。ナラ枯れによる餌不足などの影響かもしれない」と話す。
ナラ枯れは、広葉樹が甲虫の媒介するカビに侵され枯死する現象。長岡技術科学大学の山本麻希助教(野生動物管理学)は、ナラ枯れで好物のドングリが減り、ブナの実の不作も重なった、と指摘する。
その上で、「ミズナラは中越地方で75%が枯死していると考えられる。ブナは不作と豊作で実のつき方の差が激しく、他県ではブナの豊窮を事前に調査してクマ予報に用いている」とし、対策の必要性を訴える。
■出没常態化の恐れも
加えて、構造的な要因として挙げられるのが、里山の荒廃だ。新潟大学農学部の箕口秀夫教授(森林生態学)は、「里山は本来、クマと人間の生息域を隔てる境界だったが、林業の衰退などにより手入れがなされなくなった。草木が生い茂ってクマが生活しやすい環境となり、クマと人間の生息域が接近して
いる」と説明。「クマは毎年のように出てくるだろう」と常態化を危惧(きぐ)する。
その上で、箕口教授は「昔のように林業者などが里山を手入れできればいいが、現在の経済状況では難しい。行政主導の対策が必要」と話している。
◆ツキノワグマ駆除保護とバランスを◆
県によると、県内のツキノワグマ生息数は最大約1300頭(2007年、環境省推定値)で、全国のツキノワグマの約10%を占め、「絶滅が危惧(きぐ)されるツキノワグマの重要な生息地」(山本麻希・長岡技科大助教)となっている。専門家は、駆除と保護のバランスを踏まえた計画的な対策が必要とみる。
他県では、過度の駆除による絶滅を防ぐため、鳥獣保護法に基づく「特定鳥獣保護管理計画」を策定、個体や生息域の調整、管理を行っており、新潟県でも現在、計画策定の準備を進めている。山本助教は「2006年に大量に出没した際は、500頭が駆除された。生息地の保全と個体数の維持管理を
両立させる必要がある」としている。
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