ID :
15549
公開日 :
2010年 3月27日
タイトル
[廃材で古民家再現、乱開発から上海文化守る
.
新聞名
読売新聞
.
元URL.
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20100325-OYT1T01166.htm
.
元urltop:
.
写真:
写真が掲載されていました
.
オフィスビルやマンションが続々と建築され、中国の改革・開放政策の成果を象徴する上海市浦東新区で、乱開発により消失する古い民家を保存しようと、1人の農民が7年がかりで廃材をリサイクルした
豪邸を完成させ、話題を呼んでいる。
豪邸があるのは、2014年にも開業予定のディズニーランド建設予定地から3キロ・メートル、万博会場まで10キロ・メートルの同区康橋鎮。しっくいの塀に囲まれた2ヘクタール超の敷地に、扇形の黒瓦を幾重にも乗せ
た白壁の古民家が大小9棟。回廊、母屋、客間などが、池に沿って軒を連ねる。
家主は元農業指導員の王炎根さん(65)。100年以上の歴史を持つ家屋が次々と取り壊されていくのを見て「地元の文化が失われる」と危機感を抱き、周辺の解体現場から破格の廉価で資材をかき集めた。
「実家は貧しかったので豪邸にあこがれていた」という王さん。10年前、造園会社を共同で起業し、経済的なゆとりができたところで幼少の夢が再燃した。
池にかかる厚さ約20センチの石橋には、清代の「乾隆四十三年」(1778年)の刻印があるが、「開発区建設で川を埋める際、政府からタダで譲り受けた」もの。移築した30坪以上の平屋は築200年だが、価格はわず
か1万1000元(約14万3000円)。全体で約100万元(約1300万円)を投じたが、地元紙には「実際の価値は30倍」と紹介された。
広東省などに比べて、経済発展で出遅れた上海を蘇生
そせい
させるため、一農漁村に過ぎなかった浦東新区で開発が始まったのは1990年。以後の開発が著しく進み、立ち退き戸数は過去10年だけで15万8856世帯。面積は市全体の立ち退き面積の40%以上を占める22平方
キロ・メートルに達した。伝統的な家屋はこの間、次々に姿を消した。
繁栄を極めた豪農宅とみまがうばかりの王さんの再現した家屋群は主に接客用に使われている。王さんは、開発優先の風潮を批判するように、「これは社会が共有すべき財産。子どもたちに祖先の暮らしを伝える場に
したい」と語っている