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ID :  6707
公開日 :  2008年 3月12日
タイトル
[「木は50年で育つダイコンだ」
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新聞名
日本経済新聞
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元URL.
http://eco.nikkei.co.jp/column/article.aspx?id=20080311c3000c3
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元urltop:
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写真:
 
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今ホットな話題である温暖化は、グローバルな問題です。それぞれの地域や国はグローバルな問題に影響を与え、また影響を受けつつ、その地域や国の独自の問題にも直面しています。日本にとって、その ような問題の1つが、林業が成り立たなくなったことによる森林の荒廃だと思います。
 10年ほどまえに、木材会社さんたちのネットワークに入れてもらったことから、いろいろな森林や林業に関する現状を知るようになりました。あちこちの現場も見せてもらい、現場でがんばっている方々とお話をするな かで、日本の森林の荒廃と林業の衰退を何とかしたいと思い、自分のメールニュースでも、いろいろと書いてきました。
 森林は私たちにたくさんのサービスを提供してくれています。その1つは日本の国土を守るというサービスです。きちんと間伐をし、手入れをすることは、山をしっかり守り、土砂崩れを防ぎ、きれいな水を守ることです 。
 また、地球温暖化対策でもあります。元気な森は二酸化炭素を吸収するのですが、森が弱ると逆に吐き出してしまうともいわれています。間伐をして森を健全に保っておかないと、日本が京都議定書で約束している6% 削減のうち、森林吸収で3.8%分と言っていますが、とても実現できなくなります。
■木を切って運び、使うサイクルを作ろう  林業家はよく「裏山に木があるのに、出せない」と嘆きます。日本の山は急峻な地形が多いため、木を切り、運び出すコストが高くなり、外材との競争に負けてしまう、と。今、国や自治体でも間伐をするところまでは結構 補助金を出していますが、切っても運び出すコストが出ないので、切ったとしてもそのまま捨てておくことがよくあります。切った木を運び出して、家具や柱などにすれば、それを使っている間は、その木が吸収した二酸化 炭素を固定できるのですが、捨て切りでは、木は腐り、二酸化炭素が大気中に排出されてしまいます。
 ちゃんと切って運び出し、使う必要がある――そこでネックになっているのはお金の流れがないということです。
 よく私は、「木は50年で育つダイコンだ」と言います。ダイコンも種をたくさんまき、途中で間引きをして、つまみ菜として売って、作業の手間代を出しながら、最後に育った大根を収穫して、売る。だから次の年の種が買 えます。ダイコンは1年の周期ですが、木はそれが50年ぐらいの周期になったものだと考えられるでしょう。でも、かつて苗木を植え、いまつまみ菜(間伐材)はたくさんできているのに、売れないから間引きをしてくれる 人がいない。だから森がヒョロヒョロになっています。やはり途中で売れてお金が戻る仕組みにしていかないと難しいのです。森林の問題は、経済の問題なのです。