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ID :  5544
公開日 :  2007年 12月 1日
タイトル
[『最新版ハウスメーカー77社個別診断』は転ばぬ先の杖である
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新聞名
JanJan
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元URL.
http://www.book.janjan.jp/0712/0711300477/1.php
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元urltop:
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写真:
 
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建築ジャーナル編集長の西川直子氏が、はじめに、ハウスメーカー選びのために知っておきたいこととして、1.ハウスメーカーはシロウト企業である 2.営業マンもシロウトである 3.テレビコマーシャルを しているところはやめておけ 4.契約を急ぐところにロクなところはない 5.最近住宅コンビニ業がはびこっている 6.一部上場病に惑わされるな 7.営業マンと銀行マンが組んで地獄の一里塚など、各項目を簡潔 にまとめ警告を発している。安住できる終の棲家を求める人が、人生の一大事業である家を建てるには、以上の条件に当てはまらないハウスメーカーを探すか、気の合う設計者と腕の立つ工務店を見つけて設計監理と 施工の分離方式でいくか、選択肢はそのふたつであると述べ、それにそって参考資料を満載しているのが本書である。
 執筆者のひとり斎藤孝彦氏(設計事務所主宰)は、『住宅を建てるということは、地域の信頼できる大工さんや、大手のハウスメーカーにすべてお任せで頼めば良い家が安くできるという牧歌的な状況ではありません』と 述べているが、わが町を行き来すれば、あちこちに次々と建つ家の殆どが、様々なハウスメーカーによるものである。通りすがりに見れば、あれよあれよという間に家が建ち、建築主の姿は見ぬまま、いつの間にか洗濯 物が翻っていたりする。パワービルダーによる、邸宅「もどき」の生け垣と欧米「かぶれ」の建売住宅も、公営住宅の横地で大きな看板と旗で売り出されていたりする。
 公営住宅といえば、有機農産生協のポスティングで訪れたある地域のそれは、メンテナンスがゼロだかして、建物の外観や公共スペースの傷みに驚いたところもあった。一地方都市のわが町の風景からは、庶民の殆ど が家は買って住むものという状況ではないかと思われる。
 斎藤孝彦氏は、『建築主が設計施工の壁を崩し、施工者以外の第3者から設計者を自己責任で選び、なるべく詳しい図面を書いてもらって、それを根拠に、「何を」「いくらで」という契約の大原則を自ら確認する「行動す る賢い消費者」にならなければいけないのです』と述べているが、これが本書の眼目であろう。後悔したくなければ、すべてお任せではなく、すべてに関わる必要があるということだ。
 第1章の「ハウスメーカーとは何か。家づくりに必要な設計監理とは何か」によると、40坪前後の普通の戸建住宅をつくるために必要な設計図面の枚数は、A2版で30~50枚で、少なくともこれくらいの枚数がなければ 、「価格の透明性の確保」も「本当の工事監理」も望めないにも関わらず、ハウスメーカーが契約に際して、建築主に渡す図面は、3~5枚程度で、約十分の一が実状という。
 第2章が、タイトルの77社の個別診断で、アンケートと取材に基づいた各社の特長および注意事項の説明および表示は、ていねいでわかりやすい。身近な数社を読み比べても納得できるものであった。
 第3章の「欠陥住宅、業者倒産、住宅ローン破綻の防御策」も、消費者の立場に立った適切なものであり、知ると知らぬでは、人生がかわってしまうのではないかと思われるほどに親身な内容である。
 一例は、日本住宅ワランティが提案する「建築資金出来高支払管理制度すまいとMONEYPLAN」である。内容は1.つなぎ融資不要 2.建築資金出来高支払い 3.工事中の建物・建築資金の完全保証で、これまでの住 宅ローンの概念を大きく覆すというものである。
 自分の家を建てることは自己実現であると、経済学者の暉峻淑子氏に聞いて、私は本当にそうだと思った。それまでは安普請の借家住まいを余儀なくされていた私が、石橋を叩いて壊す夫に迫って牧歌的に家を建て てから、20年がたった。本書の「住まいの維持管理ガイドライン」の一覧表を参考に、我が家はメンテナンスに取り組もうと思う。子どもたちがいつの日か家を建てることがあれば、本書をもとに有益なアドバイスもして やれる。
 これから家を建てようと思う人にとって、本書は「転ばぬ先の杖」である。