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木造建築のネツト記事
ID :  5133
公開日 :  2007年 10月27日
タイトル
[窮地の国土交通省(2)建築業界大混乱に焦る
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新聞名
JanJan
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元URL.
http://www.news.janjan.jp/government/0710/0710254534/1.php
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元urltop:
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写真:
 
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“改悪建築基準法”による大混乱の影響がさらに厳しくなっている。
 「建築ジャーナル」07年10月号の特集「もうやっていられない 建築基準法改悪」の見出しは、「6.20改定建築基準法施行 見切り発車につき現場は大混乱」、「業務は増大、現場も混乱 それでも改定法は有益か?」な どだ。
 この混乱をつくった責任者、当時の住宅局建築指導課長、小川富由大臣官房審議官(建築行政担当)へのインタビューもある。
 そのタイトルは「『建築行政の信頼回復』を最優先した法改定」とある。「最優先したのは違うことだった」と、建築関係者の多くが認識しているのにそらぞらしい。だが、気になる発言がある。
 「去年の国会の議論では、民主党から対案が出て、国土交通委員会の長妻昭衆議院議員と与党とは全く対応が違っていた。そのような政治的状況の中で、実際に法律をつくって動かし、・・・」  何を言いたいのかよくわからないのだが、自民党国土交通委員のせいにしたのだろうか? 【“素人集団”がつくった改悪法】  この記事にある小川氏のプロフィルを見て、納得したことがある。小川氏は建築学科で構造の研究室を出たそうだ。構造系でなおかつ設計の実務経験もないから、設計や施工最前線の実態を知らないのだろう。
 当時の佐藤信秋・事務次官は土木学科出身で、その後の次官は2人とも法学部出身だ。山本繁太郎・住宅局長も法学部出身、企画専門官にも構造出身者がいるらしい。その上、委員会でハバを利かす御用学者も実務経 験を持たない構造系や環境系の人が多い。
 断っておくが構造系を低く見ているのではない。意匠(統括)設計者と違って、建て主(クライアント)と対面する機会が極めて少ないことを問題にしている。基礎研究の医学者が、臨床(患者に接する前線)の問題を論 じ、法律を決めたようなものだから批判している。
 「建築を創る」というマインドがなく、「建て主に対して説明と同意を重ねながら建築を創りあげていく」という経験をもたない人達だけで改悪法がつくられたから、こんなことになってしまったのだ。
 こんな大混乱は戦後史上初のことだから、昔の官僚は優秀だったということなのだろうか。
「日経アーキテクチュア」10月22日号特集『建基法不況』 赤い折線がガクンと落ちているところは、マイナス43.3%の8月を示している。直前で一旦上がっているのは6月の駆け込み着工のためだ。【3大都市圏 8月 の分譲マンション着工戸数 前年同月比64.1%減】  日経アーキテクチュア誌07年10月22日号の特集「建基法不況」は、10月2日の会見で冬柴国交相が言明した「本当に相当な落ち込み」から始まっている。「相当な落ち込み」の象徴的な例として分譲マンションの着工 戸数を挙げている。三大都市圏での8月の分譲マンションの着工戸数が、前年同月比64.1%も減ったというものだ。
 しかし国交省は、確認件数の回復を強調してもいるという。国交相も「全体の状況は徐々に回復・・・審査機関などが事務処理に慣れるにしたがって事態は収束する」と、人ごとのような甘い見通しを示したという。
 事務処理に不慣れな原因は、国交省にこそあると言うのに! しかし、8月の住宅着工戸数が前年同月比43.3%というのは全国平均のこと。そのうち神奈川県、埼玉県を含む10都道府県は50%を割っているのだ。
【景気動向調査(不動産分野)「良い」から「悪い」に転じる】  さらに、帝国データバンクが10月4日に公表した9月の景気動向調査によると、不動産分野企業の景況感が2年3ヶ月ぶりに「良い」から「悪い」に転じたという。同社情報企画課動向調査チーム野崎卓也氏が「これから は改正建築基準法を原因とした倒産が出てくるのではないか」と指摘している。
   それでも、「景況感 なお底堅さ 日銀短観 先行き慎重論も」(朝日新聞10月1日)。日銀はのんびりしたものだ。記事は、「統計の裏にある“不都合な真実”」へと進む。
 “不都合な真実”として、【法改正で出費増を余儀なくされた消費者】、【仕事はあれど収入につながらない設計事務所】、【廃業に追い込まれる指定確認検査機関】、【依然として出荷されない大臣認定プログラム】をあ げている。
   そこでは、実務を知らない官僚がつくった法律に振り回される設計者達の怒りを取り上げる。「実施設計業務から手を引く」、「煩雑な書類が意欲をそぐ」、「業務依頼は断らざるを得ない」、「法施行後に商売を替えた構 造設計者は少なくない」、「構造設計者の不足が深刻」、「全体の業務のボリュームが1.8~2倍になる」など。記事は、「建築界にこだまする改正建築基準法への恨み節」と評している。
【構造計算大臣認定プログラム 「出荷時期未定」と国交省担当官】  ソフト開発の遅れで着工激減 見切り発車の法改正、マンションにも景気にもツケ/NB online  日本建築構造技術者協会(JSCA)のアンケートに、建築構造士334人が答えている。
   新たに導入された構造計算適合性判定(適判)での計算書の再審査は不要、と72%が回答。設計段階で専門家同士がピアチェックを行うことこそが大切だ、としたのは80%を超えた。「適判」否定だ。
 適判に募る構造設計者の不信 設備設計者へのしわよせ  確認検査機関が、さまざまな要求を設計事務所に突きつけているため、報酬入金の遅延や業務量の増加が設計事務所経営を圧迫している。元請け設計事務所も過敏になり、設備設計事務所に過大な要求をするように なる、という悪循環がおきている。混乱を嘆く設備設計者は、「設備設計者は省エネや環境への配慮などの分野での高度な設計に時間を割けるようにすべき」、「確認申請というレベルの仕事に忙殺されるだけでは、設備 設計の魅力は低下し、若手が遠のく一方」と嘆く。
 全く同感だ。「建築確認」という仕事は、建築の創造活動とは全く関係ないのだから。
【民間確認検査機関までもが廃業しはじめた】  国交省に近い立場であるはずの民間確認検査機関にまで、廃業の波が押し寄せているという。審査に要する業務量が2倍に増えたほか、損害賠償への備えなどの基準が厳しくなり、採算が合わなくなったのだという。
 これら廃業した民間機関の書類は、その地域(都道府県など)の特定行政庁に引き継がれる。そのうち特定行政庁にパニックが起きるだろう。国交省にとっては、天下り先である財団法人と大手の民間確認検査機関だけ が生き残ればいいということだろうか。
 やはり、それが狙いだったのか! 建築確認の停滞が引き金になって倒産する会社  新築に依存していると倒産の可能性があるので、改修工事にシフトする鉄骨製作会社もあるという。 忍び寄る「建基法不況」の足音、破たんや廃業が顕在化 【構造家の大御所 「若い人は海外を目指せ」】  構造家として優れた実績を重ねてきた佐々木睦朗氏は、「構造に工夫を凝らした新しいチャレンジは、しばらく生まれてこないのでは」と危惧する。「本当の意味での技術力を発揮できない仕組みの下では仕事をしない ほうがいい」、「だから、若い人には海外を目指せと言っている」そうだ。
 筆者は、拙稿 建築文化崩壊元年(1)2007年、わが国建築文化の崩壊が始まった。その元凶はに、近未来を予測して次のように書いた。
 「創造性を追究する意欲的な建築家や構造家は、2008年五輪をバネに成長する中国を含むBRICS諸国やNIES諸国・地域など海外に仕事の場を求めた。才能豊かな次代を担うはずの建築家も、わが国を見限った。
専門教育に入る前の段階で、わが国の大学を忌避して外国へ向かっていったのだ」と。
 早くも「建築文化崩壊」が現実になりはじめた。
【大臣認定プログラムの性能評価申請は早くても年内】  構造計算プログラムのベンダー、構造ソフト社長の星睦廣氏がインタビューに答えている。
 「6月18日に新しいソフトを出した(大臣認定は未取得)」、しかし、「8月10日に発刊された、技術基準解説書の内容を折り込まなければならない」。したがって、「大臣認定プログラムの性能評価を申請できるのは早く ても年内ぎりぎりになる」。
 さらに同氏は、「改正法は、保有水平耐力比1.0を下回るものをつくらせないというだけで、性能を高める方向には誘導していない」、「完璧なものをつくればいいというのは、国交省の机上の空論」と批判している。++/ div++