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ID :  5081
公開日 :  2007年 10月22日
タイトル
[地震に強い!? 昔の木造建築
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新聞名
読売新聞
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元URL.
http://osaka.yomiuri.co.jp/shinsaimirai/sm71022a.htm
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元urltop:
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写真:
 
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古い木造住宅は地震に弱いと考えられてきた。だが、日本古来の伝統的な建築法は、古くても意外と耐震性が高いことが、今年7月の新潟県中越沖地震などで確認された。ただ、その持ち味を考慮せずに増 築や耐震補強を行えば、かえって倒壊しやすくなる可能性がある。
(山崎光祥) 柔よく剛を制す  大手住宅メーカーなどが建設している木造住宅では主に「在来工法」という建て方が採用されている。特徴は、▽コンクリート基礎の上に土台をしっかり固定▽柱とはりなどの横架材との接合部を金物で補強▽壁に筋 交いや合板、石こうボードを使用――などで、頑丈な造りだ。
 それに対し、神社仏閣などの建設を通して発展した日本古来の木造建築は「伝統工法」と呼ばれ、▽土台は敷設せず、柱脚を礎石に載せるのが一般的▽柱と横架材はほぞとほぞ穴で緩やかに接合し、金物では補強し ない▽壁は土塗り壁が多く、筋交いや合板、石こうボードは入れない――という特徴がある。一見、弱々しく、揺れやすそうに感じられる。
 耐震性を調べるため、防災科学技術研究所(茨城県つくば市)と京都大防災研究所は今年1、2月に兵庫県三木市の「実大三次元震動破壊実験施設(E―ディフェンス)」で実験を行った。震動台の上に、屋根の構造を変 えた典型的な伝統工法の2棟を建設。阪神大震災で記録した最大震度7の地震動で揺らしてみた。
阪神大震災の揺れに耐えた伝統工法による木造住宅(2007年2月2日、兵庫県三木市のE―ディフェンスで) いずれも、柱脚が礎石の上を滑ることで、地面の急速な動きを建物に伝えにくくする免震効果が働いたほか 、柱と横架材が接合部でしなやかに動いて揺れを建物全体で受け流し、倒壊を免れた。壁は設けなかったが、実際には土壁が壊れて地震のエネルギーを吸収するという。
 こうした実験結果は、住宅6493棟が全半壊した今年7月の中越沖地震でも実証された。
 京都大防災研究所の鈴木祥之教授らのグループは被災地で現地調査を行った。柏崎市中心部の北東約15キロにある木造民家は、築105年と調査対象で最も古かったが、被害は土壁に亀裂が入り、漆喰(しっくい)が はがれた程度で、いずれも修復可能という。
耐震性を保つには  伝統工法の建物でも、湿気やシロアリで接合部が傷むと、本来の持ち味が発揮できなくなる。中越沖地震や今年3月の能登半島地震などでも柱と横架材の接合部の劣化による倒壊被害が多数確認された。
 被害の集中した1階が店舗、2階が居室という木造住宅では、壁の少ない1階が柔らかく、壁の多い2階が固くて重いというバランスの悪さが影響した可能性があるという。
 伝統工法の建物を在来工法で増築したり、補強したりすると、かえって耐震性が低下することもわかってきた。
 鈴木教授らは、伝統工法の土壁と、筋交いの入った在来工法の壁をつないで揺らす実験を実施。土壁だけなら、筋交い入りの壁で限界となる変形を超えても壊れないが、両方をつなげると筋交い入りの壁が壊れた衝 撃で土壁も壊れた。
 鈴木教授は「伝統工法の建物を耐震補強する際は、在来工法の壁を加えたり、接合部を金物で固定したりせず、柔らかくしなるという伝統工法の持ち味を損なわない配慮が必要。1階と2階のバランスが悪い建物では、 2階の壁を減らすという方法もある」と提言している。