ID 2303
登録日
2006年 12月16日
タイトル
滅びゆく日本の天然林を救え
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新聞名
JanJan
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元URL.
http://www.janjan.jp/area/0612/0612166561/1.php
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元urltop:
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写真:
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去る12月5日、日本の天然林をこれ以上の伐採から救い、国有林内の天然林を環境省に移管して保全することを目指して、「日本の天然林を救う全国連絡会議」が発足しました。
代表世話人を務めるのは、国際自然保護連合生態系管理委員会・北東アジア担当副委員長、大規模林道問題全国ネットワーク代表で、京都大学名誉教授の河野昭一氏です。呼びかけ人には、哲学者の梅原猛氏や経済
評論家の佐高信氏、作家のC.W.ニコル氏、加藤幸子氏をはじめとする各界の識者が名を連ねています。
わが国の天然林が危機的な状況に陥っていることを、どれくらいの国民が認識しているでしょうか? 現在、わが国の国有林天然林は461万haしかありません。このうち手つかずの原生的天然林は278万haだけです。
1950年には日本の原生的天然林は953万haありましから、50余年で675万ha、71%もの原生的天然林が消失してしまったのです。
しかも、わずかに残された278万haの原生的天然林のうち130万haは今でも伐採の対象となっているのです。原生的天然林は今や瀕死の状態といえるでしょう。
日本の美しい原生林は林野庁によって奥地まで皆伐され、針葉樹の造林地へと置き換えられてきました。それとともに森林の育んできた貴重な動植物も激減してしまいました。今もなお、これまで伐採をまぬがれてきた
山奥の原生林が伐られ、無残な姿に変えられています。
北海道では、エゾマツやトドマツの針葉樹、ウダイカンバやカツラ、センノキなどの広葉樹、そして道南のブナなどが、次々と伐採されています。かつての森林には直径が1mもあるような大木があちこちにありました
が、度重なる伐採により今では直径30cm程度の木ですら伐採される状況です。
「老齢過熟木を伐採し、森林を若返らせる」との名目で、大径木ばかりを伐り出してきた結果、かつての原生林の面影を残す森林はほとんど消失してしまいました。国立公園といえど、山奥まで作業道が網の目のように
張り巡らされ、大径木は伐りつくされています。
近年は、青森県のヒバ・ブナの混交林、秋田のスギ・ブナ混交林、木曽のヒノキ林など、最後に残された天然林にまで伐採の手が及んでいます。
独立採算制の林野庁は、国民の財産である天然林を伐採によって破壊しつづけたあげく、1998年には3兆8000億円もの累計赤字を計上してしまったのです。このため借金のうちの2兆8000億円を一般会計などか
ら補填し、「木材生産重視」から「公益的機能重視」へと方針転換をしました。
ところが、今なお1兆円の借金を賄おうと、「公益的機能重視」とは名ばかりの木材生産を目的とした伐採を続けています。しかし天然林の伐採による年間収益は100億円程度で、これは林野庁の年間予算の2~3%で
しかありません。そのわずかな収益のために、かけがえのない天然林を食いつぶしているのです。
こうした破壊を食い止め、わが国固有の生態系をもつ天然林を保全するためには、もはやその管理を林野庁に任せているわけにはいかないでしょう。このような思いから「日本の天然林を救う全国連絡会議」が立ち上
げられました。国有林内の天然林をすべて環境省に移管して保護・保全することを求める請願を内閣総理大臣、衆議院議長、参議院議長に提出するために、署名活動を行っています。
「日本の天然林を救う全国連絡会議」のホームページに掲載された伐採量経年変化を見ると、年間の伐採量が大きく減少していることがわかります。これは、もはや日本の森から「伐ることのできる価値のある木がなくな
っている」からにほかなりません。今この伐採を食い止めないと、残り少ないわが国の天然林は近い将来、壊滅状態になることが懸念されます。
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