ブナの倒木は先月下旬、山岳自然ジャーナリスト北田紘一さん(63)=盛岡市=や八幡平の葛根田ブナ原生林を守る会事務局長の白藤力さん(62)=同=らが見つけた。地上1・5メートルの位置で根元から折れ、 幹は南西方向に倒れていた。
折れ残った根元の内部は空洞化が進んでいた。倒れた幹はみずみずしさを残してチシマザサの上に身を横たえ、根の周囲には半径約30メートルの空間がぽっかりと生じた。
ブナは樹高28メートル、幹回り5・8メートル。全国十指に入る巨木で、枝それぞれが幹のように太く、多くの葉を茂らせ、1本で1つの森のような空間をつくり出していた。
1990年の全国原生林シンポジウム盛岡大会のポスターにブナの写真を使った北田さんは「倒れた瞬間を考えると涙が出そうだ。ありがとう、頑張ったねという気持ちだ」とねぎらう。
観察会を重ね、同ブナを全国に紹介してきた白藤さんは「南西に倒れていることから先月上旬の暴風が影響したかもしれない。森にとって数100年に1度の大事件。朽ちていく巨木とともに新しい森のスタートを見 守りたい」と願う。
【写真㊤=空洞化した根元を残し、チシマザサの上に身を横たえるブナの巨木。張り出した枝には多くの枯れ葉が付いたままだった=6日午後】
このページの公開日は1999年11月12日。最新更新日はです。