ID 1796
登録日
2006年 10月 6日
タイトル
社説:ナラ枯れ被害 早期防除で拡散を防げ
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新聞名
秋田魁新報
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元URL.
http://www.sakigake.jp/p/editorial/news.jsp?kc=20061006az
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元urltop:
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写真:
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森林が県土の71%を占める本県にまた新たな脅威が現れた。ミズナラなどのナラ類を集団で枯死させる「ナラ枯れ」被害が、北限とされてきた山形県遊佐町から一気に県境を越えて、にかほ市内で確認さ
れたのだ。
拡散を抑えるには、発生の最先端で集中的な防除態勢をとることが肝要とされている。対応を誤れば、すでに沿岸部を中心に全県に拡大してしまった松枯れ被害の二の舞いになりかねない。にかほ市をはじめ、周辺
市町村、県、森林関係者はナラ枯れ発生地の囲い込みに万全を期すべきだ。
ナラ枯れは、カシノナガキクイムシが運ぶナラ菌によって発生するとされている。菌を媒介するカシノナガキクイムシは体長5ミリほど。6月下旬から8月にかけて健全なナラ類の幹に穴を開けて内部に入り込み、トン
ネルを掘り進みながら樹幹内で一生の大部分を過ごす。このため菌も樹木内全体に繁殖し、通水が阻害された木は9月上旬には枯死する。
厄介なのは完全駆除が難しい点である。確実な効果を発揮する殺菌剤は現時点で開発されておらず、媒介するカシノナガキクイムシの殺虫など、ナラ菌の拡散を最小限に抑える防除態勢を敷くのが目下の最善策で
ある。山形県では、平成3年に新潟県境に近い旧朝日村で発生して以来、被害区域が徐々に広がり、17年度には18市町村で約4万本の被害が確認されている。カシノナガキクイムシ自体が非常に小さい上に、樹幹内で
過ごすために発見しにくいことや、急傾斜地での作業となることも駆除・防除の難しさに拍車をかけているようだ。
本県の民有林(44万6千ヘクタール)の40%はナラ類とされており、被害が拡大すると、森林が持つ水源の涵養(かんよう)機能が損なわれるだけではなく、山の局所的な崩壊や、野生獣類や昆虫などの食料供給の減
少など、自然破壊や生態系への影響も心配される。
山形では、ミズナラ、カシワ、コナラ、クリの順に被害が多く、とりわけミズナラが被害に遭いやすい。本県でナラ枯れ被害が拡散した場合に懸念されるのは、沿岸部を中心とした海岸林に及ぼす影響である。松枯れ被
害の連鎖を断つため、県は海岸林としてマツと広葉樹の混交林を検討しているが、ミズナラ、カシワはその主力樹種だ。
混交林であれば、たとえ林内のマツが松くい虫被害で枯れても、ミズナラなどの広葉樹が生き残り、防砂、防風効果があるとして期待されていた。ナラ枯れの拡散を食い止めない限り、本県沿岸は松くい虫とナラ枯れ
の2つの脅威にさらされ続けることになる。
早期発見、早期防除の鍵となるのは、ナラ枯れの脅威を民有林所有者のみならず県民が広く認識することである。被害木の目印はカシノナガキクイムシが侵入した痕跡である樹幹の小さな穴と、根元に散乱する細か
い木くずだ。行政、森林関係者は、ナラ枯れ被害が発生しやすいミズナラをはじめとするナラ類の分布範囲図の確認を早急に行うべきだ。由利沿岸部から急速に拡大した松くい虫被害拡散の教訓を生かしたい
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