ID 12198
登録日 2009年 6月18日
タイトル
クローン桜で名木再生 住友林業筑波研究所
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新聞名
朝日新聞
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元URL.
http://mytown.asahi.com/ibaraki/news.php?k_id=08000000906190002
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元urltop:
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写真:
写真が掲載されていました
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全国各地の古寺に伝わる伝説の桜の名木を、住友林業筑波研究所のグループがクローン技術で再生させている。木の枝から若芽を採って培養し、成木に育てて増やす。枯死間近い古木を、遺伝子はそのま
まに、年を若返らせる。会社の収益には結びつかないが、地域のシンボルの再生を通じて街づくりに貢献したいという。
(嘉幡久敬)
京都・醍醐寺三宝院の「土牛の桜」。昭和の日本画家奥村土牛が描いた見事な枝ぶりの枝垂れ桜の再生を、同研究所の主任研究員中村健太郎さん(42)たちが頼まれたのは10年前。樹齢150年を超え、衰えを心配し
た寺側から、インドネシアの熱帯林を再生した実績をかわれた。
だが、研究者にとって熱帯林と桜は別物だ。培養条件は不明だし、古木なので採取できる若芽も少ない。中村さんたちは、とりあえず失敗してみようと培養を始めた。案の定、3カ月後にすべて枯れてしまった。培養液
を変え、試行錯誤の末に何とか育てた芽を戸外に植え直すと、今度はすべて冬眠してしまった。
つきあいのあった園芸農家の言葉を思い出した。「バラは秋に山上げして冬の寒さにさらすと花芽が増える」。桜はバラ科だ。芽を冷蔵庫に入れると、眠っていた芽から葉が育ち始めた。依頼を受けて約1年後、枝垂れ
桜のクローンが初めて誕生した。
培養技術の特許を申請し、06年冬、境内に移植した。翌春花が咲くと、住職から「これで仏様に(花を)お供えできます」と喜ばれた。
同じクローン桜は、老人ホームや高校など全国数カ所以上に移植された。
国立病院機構徳島病院(徳島県)に移植された桜は、入院患者たちを満開の花が楽しませている。中村さんが現地に出向いて木のいわれを説明すると、寝たきりの筋ジストロフィーの患者から「窓から季節を感じられる
。京都には行けない体なので、感激した」と感謝された。
長興山紹太寺(神奈川県小田原市)の「瓔珞(よう・らく)桜」の再生も手がけた。高さ13メートルを超える徳川家ゆかりの桜は、かながわの名木100選の一つ。樹齢340年と古く、技術開発は困難を極めたが、6年がかり
で培養に成功。戸外への移植にもめどがついた。
中村さんはボルネオ島に住み込んで研究を続けたかつてを振り返り、「熱帯林の再生は地球環境の保全が目的ですが、私にとっては話の規模が大きすぎて実感がわかなかった。桜は日本人の心のよりどころ。花が咲け
ばいろいろな人が喜んでくれる。研究者冥利(みょう・り)につきます」と話す。
最近は、仁和寺(京都市)の「御室桜」の再生のため、基礎調査に取り組んだ。種類の違う桜、さらに年老いた桜の再生が今後の目標だ。
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