ID 12132
登録日 2009年 6月 6日
タイトル
しなの見聞録:木島平・カヤの平高原 日本一美しいブナ原生
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新聞名
毎日新聞
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元URL.
http://mainichi.jp/area/nagano/news/20090607ddlk20040003000c.html
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元urltop:
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写真:
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動植物も豊富な「自然劇場」
「日本一美しいブナの原生林があります」。木島平村から届いた一通の電子メールに誘われ、「カヤの平高原」に出かけた。誰もいない湿原のせせらぎで顔を洗い、澄み渡ったブナ林の風でほおを乾かした。長野市街地
から車で2時間足らずで出会える大自然がある。【竹内良和】
上信越自動車道豊田飯山インターチェンジを降り、木島平村へ。林道を抜け、案内所やキャンプ場などが周囲に集まる駐車場に車を止めた。1日に山開きしたが、平日だけに観光客は記者ぐらいだ。
村総合政策課情報係長、高森喜久さん(49)は「世界遺産の白神山地ほどのスケールではありませんが、知る人ぞ知る秘境。ブナの樹皮の美しさから『日本一』と呼ばれるようになったようです」。
昭和50、60年代には県内から多くの子どもたちがキャンプにやって来た。最近は家族連れが多いという。高山植物やフクロウ、ヤマガラなどの動植物も豊富で、村のうたい文句は「自然劇場」。昨年度、全国から約5万
5000人が訪れた。冬季は立ち入れない。
四季折々の高山植物が見られる「北ドブ湿原」を目指す。記者はチノパンと牛革のカジュアルシューズ、ワイシャツにネクタイという軽装。ひげを生やしたロッジの男性に「こんな格好でも平気ですか」と尋ねると「靴は汚
れますけど」とゴーサインを出してくれた。
落ち葉で埋まる遊歩道へ出た。保水力は抜群で、足元はフカフカ。灰白色のブナと新緑のコントラストが美しく、樹齢200~300年の大木もある。どこまでも続くブナ林。エコーが掛かったように鳥のさえずりが響き渡る
。間もなく携帯電話の画面に「圏外」の赤い表示が出た。
「傾斜が緩く歩きやすい」という道のりだが、運動不足の身には結構つらい。1・5キロのコースを20分ほどで歩くと、何本もの遊歩道が交差する場所に出た。心臓はバクバクと音を立て、汗はダクダク。ベンチで腰を休
め、「北ドブ湿原」を指した標識の方向を歩き出す。だが、20分以上歩いても着かない。道を間違えたようだ。
更に歩くこと10分。急な下り坂が現れた。ここを通らないと、また遠回りになる。覚悟を決め、かばんとカメラをたすき掛けに斜面を下りた。靴底は町歩き用だから、申し訳程度の浅い溝しかない。辺りの枝や根をたぐり
寄せながら、腰をかがめてこわごわ進む。「藁(わら)をもつかむ」とはこのことか……。
急斜面を過ぎて15分ほどで、眼前に約7ヘクタールの湿原が開けた。広がる緑のなかに、高山植物のリュウキンカが黄色いかれんな花を付けていた。7月には山吹色のニッコウキスゲが湿原を埋め尽くすという。一筋
のせせらぎを手ですくうと、ジーンと響くほど冷たい。汗まみれの顔を洗い流せば疲れが吹き飛んだ。広大な湿原に一人。大自然の恵みを頂いた。
歩くこと2時間弱。出会ったのは花や鳥たちだけ。たまには街の騒がしさと他人の目から逃れて、自然に抱かれてもいいではないか。
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■ことば
◇カヤの平高原
木島平村東部の山に囲まれた標高1400~1700メートルに、ブナの原生林が広がる。全国でも名高い、村特産の「木島平米」は、原生林を水源地とする水で生産されている。1150ヘクタールのブナ林は、76年に貴
重な自然を保護し、自然とふれあう国の「自然休養林」に指定された。
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