ID 5620
登録日 2008年 2月 5日
タイトル
輝きを失う「北米大陸の王冠」
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新聞名
nikkei Bpnet
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元URL.
http://www.nikkeibp.co.jp/news/eco08q1/560248/
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元urltop:
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写真:
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原始の姿をとどめる自然公園
何もかもが輝き、力強く、原始の姿をとどめるところ。グレイシャー国立公園からは、天にも手が届きそうだ
米国モンタナ州の中央部からカナダ南部にかけて約400kmにわたり、ほぼ途切れることなく続くロッキー山脈。目に映るあらゆる景色をいっそう際立たせるその輪郭を、人は「北米大陸の王冠」と呼ぶ。そのうち、グレイシ
ャー(氷河)国立公園が位置するのは、南はモンタナ州の原野から、北はカナダとの国境にはさまれた地域。国境の向こうには、カナダのアルバータ州とブリティッシュ・コロンビア州が広がる
タイリクオオカミやオジロライチョウが生息するこの地では、嵐が津波のごとく大陸分水嶺を襲い、イヌワシは風に乗る。樹齢200年にもなる奇妙によじれた木々は、オオツノヒツジがやっと隠れるほどの高さしかないせっかちな野の花が雪の中から顔をのぞかせ、景色に彩りを添える。日の出前や日没直後には、バラ色の光が太古の氷を染め、年老いて毛先が銀色になったクマたちも姿を見せる。すばらしい景観に抱かれて尾根を歩
けば、地球の息吹との、魂を揺さぶられるような対話が始まる
アカシカはやぶを踏み分け、シロイワヤギは断崖を駆けあがるが、山を登るなら“クマのエレベーター”をたどるのが一番だ。真っすぐ切り立ったこの小道では、雪崩が森の木々を押し流し、開けた草原が育つ。夏がどれ
ほど暑く長くても、ここではある高度を超えるといつまでも春のような気候だ。雪が解けて、水分をたっぷり含んだ土から芽吹いた植物の新芽を求めて、ハイイログマ(グリズリー)が暖かい季節に数カ月かけて、谷底か
ら山頂に移動してくる。クマのエレベーターと言われるゆえんだ。
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