ID 4717
登録日 2007年 9月14日
タイトル
葉桜の季節に君を想うということ
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新聞名
沖縄タイムス
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元URL.
http://www.okinawatimes.co.jp/col/20070917m.html
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元urltop:
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写真:
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不摂生な生活を続けた報いか。四十代も半ばになるとシミやしわが増え、視力、体力の落ちようといったら悲惨極まりない。頭髪が少なくなる一方で、まゆ毛や鼻毛は恥ずかしげもなく伸びる。
三十歳以降は「老い」との闘いだ。しかも最初から負け戦は覚悟の上である。アンチエイジングという抵抗がむなしく響くほどに、追いかけてくる「老い」の足は速い。年とともに「もうひと踏ん張り」が利かなくなり自己嫌悪
に陥る。
数年前、話題になったミステリー小説「葉桜の季節に君を想うということ」(歌野晶午著、文芸春秋)に、こんな主人公の言葉がある。「花が散った桜は世間からお払い箱なんだよ」「だがそのあとも桜は生きている」。桜は
満開の時期が短く花のない季節が長い。
人も似たようなものだ。年々、体力は衰え肉体はたるみ、見てくれも悪くなる。半面、確実に増えるものがある。知識や経験だ。若いころには見えなかったものが見えてくる。葉桜を嘆く前にそのよさに気づきたい。
小説の末尾には中国の作家、林語堂の言葉が引用されている。「人生の黄金時代は老いて行く将来にあり、過ぎ去った若年無知の時代にあるにあらず」。介護保険や年金など未来の課題が多いなかで、老後に光を与
える一言だ。
きょうは「敬老の日」。誰でも「苦老」はいやだ。寄る年波を受け入れて経験による「発見」を重ねることが、葉桜の季節を輝く時代へと導く。(
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