v10.0
- ID:
- をしております
40859
- 年:
- 2018
- 月日:
- 0227
- 見出し:
- )白山に学ぶ 巨木、自然な姿こそ美しい
- 新聞名:
- 朝日新聞社
- 元URL:
- https://www.asahi.com/articles/ASL2R3666L2RPJLB001.html
- 写真:
- 【写真】
- 記事
- 山の中を歩いていて、またドライブをしていて、特別に大きな木に出合った時に感動したり、畏敬(いけい)の念を抱いたりした経験のある方もいることでしょう。人の住んでいる近くにある巨木は、その木についての伝説が残っていたり、天然記念物として指定され文化財として守られていたりするものが多くあります
また原生林の残る白山の山深くでは、ほとんど人知れずに立ちそびえる巨木もあります
白山麓(ろく)では、一般道路から見える巨木として吉野谷地区の「御仏供(おぼけ)スギ」、鳥越地区の「五十谷の大スギ」、尾口地区の「瀬戸の夜泣きイチョウ」などがあります。御仏供スギは国の天然記念物、後の二つは県の天然記念物に指定されていて、いずれも古くからの伝説が残っています。特に御仏供スギは吉野工芸の里近くにあり、周辺は公園として整備されて休憩や散策しながら眺めることができます。他には白峰地区の林道の奥にある国の天然記念物の「太田の大トチノキ」、一里野温泉近くの林の中にある、白山市の天然記念物の「弥四郎(やしろ)の大栗(おおくり)」と「与平(よへい)の楓(かえで)」などがあります
白山の登山道を歩くだけでなく、春の残雪を踏んで道のない原生林を訪ね歩いたことが多い私は、ブナやスギなどいろいろな巨木と出合いました。とりわけ印象深かったのは、1995年5月上旬に別山の麓の岩屋俣谷(いわやまただに)を渡って雪の斜面を上りつめた時に、そこに現れた巨木でした。それは芽吹き前の高く大きく枝を広げたカツラで、一緒に行った知人に根元に立ってもらって撮影すると、幹の太さと樹高が半端でないことがよくわかりました。昔から「コモチカツラ」として地元では知られた木のようでしたが、道がないことから一般にはまったく知られていませんでした。その後、林野庁の「森林の巨人百選」となったり、白山市の天然記念物に指定されたりして、今では登山者などの一部に知られるようになりましたが、道がないことから一般的には見に行くことは困難です。近年、案内を頼まれて再訪しましたが、市ノ瀬から登山道とヤブをかき分け残雪の上を歩いて2時間以上かかりました
巨木は有名になると道ができ、特に国の天然記念物ともなると、文化財として見学のための施設のほか、その保存を図るための施設も作られることがあります。「御仏供スギ」や「太田の大トチノキ」は、車で近くまで行くことができ誰でも見ることが可能ですが、雪の重みなどで枝が折れないように多くの添え木が立てかけられていて、本来の姿を見ることはできず、痛々しいと感じるくらいです。白山の原生林の中に人知れずある巨木が、たとえ枝折れしようともたくましく生きている自然な姿こそ美しいと感じます
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