v10.0
- ID:
- 37885
- 年:
- 2017
- 月日:
- 0311
- 見出し:
- さんしゅうの木
- 新聞名:
- 産経ニュース
- 元URL:
- http://www.sankei.com/region/news/170311/rgn1703110044-n1.html
- 写真:
- なし
- 記事
- 3月に入り、賑やかに咲き誇っていた梅の花もほぼ終わったようである。それでも、梅の種類によって花の時期が多少ずれるので、花の蜜を吸いにやって来るメジロの姿は未だ毎日見られる。それにしても、春は嬉しいもの。梅が終りかけると桜桃(サクランボ)の花が咲き始めるし、スモモの花もぼちぼち開き始めている。他にも薄桃色の花を咲かせている木があったので調べたら、緋寒(ひかん)桜か河津桜のようであった
紅梅は別として、この時期樹木の花は白か薄桃色が多いのだが、黄色い派手な花の木が3種類あることに気がついた。1本はお寺の庭にあるマンサクの花で、これはひょっとすると梅と同時に咲き始めたかも知れない。もう一つが、ミモザの花。この木は成長すると枝を四方八方に伸ばすので、相当に広い庭のあるお宅でないと持て余すであろう。ただ、この時期の木の花で艶やかな黄色の花は少ないので、僕も一本くらい植えようかと思っていた。が、「10年くらい経つと手に負えなくなるから、止めた方が賢明でしょう」と植木屋も同じこと言ってくれたので断念
地球上ミモザの種類はかなり多く、僕がかつて暮らしていた南米にもあった。日本の秋に当たる季節に、黄色い美しい花を見事に咲かせていた。葉の形はアカシヤに似ていて、満開になると黄金の雨が降っているような風情があったので、現地では「シューバ・デ・オーロ」、金の雨と呼んでいた。また、フランスを訪れた際、レストランにミモザ・サラダというのがあったので注文したら、レタスやクレソン、ルッコラという緑の野菜の上に、裏ごしを施した卵の黄身がふんだんに掛けられていた。味の良し悪しは忘れたが、春らしいミモザの花の雰囲気であったことははっきりと覚えている
もう一つの黄色い花は、さんしゅうの木。「山椒は小粒でピリリと辛い」のサンショウと間違える人が多いが、こちらはミズキの仲間だそうだからヤマボウシと呼ばれている樹の仲間であろう。漢字で書くと山茱萸となるのだが、これは秋深くなると枝の先にグミ(茱萸)の実によく似た赤い実がなるから山茱萸となったのではないか? もう一つ解らないのが、なんでさんしゅうと呼ばれるようになったのであろうか。こればかりは、どうにも納得のいく答えに辿(たど)り着かない。因(ちな)みに、宮崎民謡のひえつき節に出て来るのは、庭の山椒で山茱萸ではないそうだ
ところで、さんしゅうの実はブルガリア辺りではヨーグルトの実と呼ばれているらしい。勿論(もちろん)、ブルガリアのさんしゅうの木だから、日本のものとは違う種類だとは思う。しかし、日本のさんしゅうの木は江戸時代の中期に漢方薬として木の実が輸入され、その種が日本の土に根付いたとされている。だとしたら案外ブルガリアの、ヨーグルトの実に近いのかも知れない。秋になって山茱萸が実をつけた暁には、是非牛乳に混ぜて山茱萸ヨーグルトを作ってみよう。ヨーグルト大国のブルガリアで、こうした楽しいヨーグルト作りを実践しているのであらば、さぞかしフルーティーなおいしいヨーグルトが出来るに違いない
ヨーグルトというと、我が家ではヨーグルトは自分で作っている。と、偉そうなことを言っているが、市販されているヨーグルターなる道具に、脱脂粉乳を湯で溶かしぬるくなったところを見計らってスイッチを入れるだけ。と言っても、ヨーグルトのもとになる乳酸菌を入れなければヨーグルトは育たない。世間では、カスピ海ヨーグルトだとかコーカサスのヨーグルトなどというのが出回っているが、僕は市販の無糖のヨーグルト買ってきて一本加えかき回すだけ。四十数度に一定時間保ち、あとは冷蔵庫で保存。数回は同じ味のヨーグルトが出来るが、酸味が出てきたら新しい種に変えている
てなことで、山茱萸の黄色い美しい花がヨーグルトに転じてしまったが、ブルガリア風のさんしゅうヨーグルトの味はどんなものであろうか、益々興味が湧いて来た。良い結果が出たら、必ず報告することを約束しよう
..