v10.0
- ID:
- 37570
- 年:
- 2017
- 月日:
- 0210
- 見出し:
- 松に会いに行く
- 新聞名:
- 福島民報
- 元URL:
- https://www.minpo.jp/news/detail/2017021038877
- 写真:
- なし
- 記事
- 雪をかぶった小高い丘を目指す。森を抜け、横殴りの風が吹き付ける峰に出ると、樹齢数十年の松の木が出迎える。幹はうねうねと曲がっているが、どっしりと根を下ろす。枝に積もった雪の下にはキラキラと青葉がのぞく
林業の世界に「谷杉峰松」という言葉がある。杉はひ弱なので土が肥え水の多い谷筋が植栽に向いているが、松は風が強く寒い場所でもよく育つから、峰に植えてよい-という言い伝えだ。植林の適地を教えながら、厳しい環境に置かれても成長する松のたくましさを言い表している
亡くなった名優・高倉健さんは松への思いを書きつづった。<凍[い]てつく風雪の中で、木も草も枯れ果てているのに松だけは青々と生きている。><自分は、この松のように、青々と、そして活[い]き活[い]きと人を愛し、信じ、触れ合い、楽しませるようにありたい。>(新潮文庫「旅の途中で」)
震災、原発事故に見舞われた被災者を最も勇気づけた植物は松だったかもしれない。津波に耐え抜いた南相馬市や岩手県陸前高田市の一本松から元気をもらった人は多かろう。人生に行き詰まった時、近所の松に会いに行きたい。得ることは必ずある
( 2017/02/10 09:13 カテゴリー:あぶくま抄 )
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