冷え込んだ冬の朝にヨーロッパの森を歩いていると、まるで老人の白髪のような形をした物体が地面に落ちていることがあります。実はこの物体は氷が絹糸のように細長い形状をとって密集したもので、「Hairice(ヘアーアイス)」とも呼ばれています。この不可思議な現象がなぜ起こるのかという謎を、ドイツとスイスの研究者らが解明しました
BBC - Earth - Mysterious "hair ice" is formed by fungushttp://www.bbc.co.uk/earth/story/20150727-mystical-hair-ice-riddle-solvedヘアーアイスが作られるのは湿度の高い冬の夜だそうで、気温は0度をわずかに下回ったくらいが最もヘアーアイスが作られやすいとのこと。氷点下で水分が凍るのは通常の現象ですが、ドイツやスイスなどの森林では、広葉樹の木材から絹糸のようにも白髪のようにも見えるゆるくカールした細長い氷が伸びることがあります
実際に木材から伸びたヘアーアイスはこんな感じ。氷の直径はわずか0.02mmであり、長さは最大で20cm近くになることもあります。一見するとウィッグが地面に落ちているように思われますが、氷は細いだけあって非常にもろく、暖かくなるにつれて溶けてしまうとのこと。ヘアーアイスが形成されるのは北緯45~55度の広葉樹林であり、一度ヘアーアイスを生み出した木材はその後も繰り返しヘアーアイスを作り出すことが多いそうです
実際にヘアーアイスが形成されていく様子を捉えたムービーがこれ
Timelapse video of growing hair ice画面に映っているのは湿った木材
氷点下でじっと観察を続けると、やがて木材の水分が凍って表面に白く浮き出てきます
氷がゆっくりと木材から突き出ていく様子はまるで生き物のようですが、よく見ると氷が細い糸状になっていることが確認できます
どんどんと氷が成長していきますが、なぜか氷の糸はそれぞれが合体することなく細く伸び続け……カールした白髪のようなヘアーアイスを生み出しました
ベルン大学のChristian Matzler教授は、「森を散歩していて初めてヘアーアイスを見た時、あまりの美しさに驚きました」と語っています。好奇心をそそられたMatzler教授は、同僚と共にヘアーアイスがなぜ作られるのかを研究し始めたとのこと
研究を進めた結果、チームはヘアーアイスが作られる原因として、木材に存在する「Exidiopsis effusa」という真菌の一種を特定しました。この菌が存在しない場合でも木材の表面に氷が作られることはありますが、その場合はヘアーアイスのような糸状をとらないそうです
Matzler教授は真菌から氷が再び結晶化するのを防ぐ化学物質が作られていると考えており、氷の再結晶が妨げられることによって氷が直径0.02mm以上の大きさにならず、細いまま数時間にわたって成長を続けるとみています