v10.0
- ID:
- 43036
- 年:
- 2018
- 月日:
- 1030
- 見出し:
- Fパワー事業 懸念に対し情報公開を
- 新聞名:
- 信濃毎日新聞
- 元URL:
- https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20181031/KT181030ETI090009000.php
- 写真:
- なし
- 記事
- 森林資源の有効利用を目指す信州F・パワープロジェクトで、バイオマス発電施設の建設が塩尻市で始まる。国産木材の発電では全国最大規模となる
運用開始は当初計画から5年半遅れ、2020年10月の予定だ。建設資材の高騰によって事業費が膨らみ、出資者の調整に時間がかかるなど、曲折を経ての着工である。木材を安定的に大量調達していけるのか、林業関係者などからは懸念する声が出ている
松本市の征矢野建材などによる民間主体の事業だが、公的な側面が強い。県は、国の交付金を原資とする基金から25億円を補助している。敷地を貸す塩尻市も、周辺の市道を計7億8200万円で整備するなど、深く関わる
林業再生や循環型社会の形成を狙う意義は大きい。だが描いた通りに進む保証はない。これまでの経緯をみると、見通しの甘い面も目につく
事業者には、積極的に計画の進み具合を情報公開し、懸念に応える責任がある。県と市には、状況を把握して県民に伝えていく姿勢が求められる
プロジェクトは2012年に構想を発表。木材加工と発電の2部門あり、木材加工工場は15年に稼働した。発電施設の総事業費は当初計画の1・7倍の100億円弱に膨らむ見通しとなっている
事業者は、計画通りの発電に必要な木材を年間14万トンと設定。加工工場から出る端材を2万トン、半径50キロの森林から持ち込まれる木材を12万トンと見込む。間伐材や松くい虫被害木を想定している
この量の確保について、林業関係者の間には「50キロ圏内の全業者が毎日持ち込んでも厳しい」といった見方がある
林野庁によると、同様の発電施設は昨年3月に全国で39カ所だったが今年3月には53カ所に増えている。木材の確保競争が起きる可能性はないと言えるだろうか
木材加工部門では昨年6月、製品の販路開拓が進まず、主力素材に想定したアカマツの受け入れを一時停止する事態が発生した
天然林を伐採して針葉樹を盛んに植えた1950〜60年代の「拡大造林」の人工林が成長し、森林資源活用への期待は全国的に高まっている。軌道に乗せるには、伐採し運び出す林業の人材や機械の確保、木材需要の開拓などをバランス良く進める必要がある
県は、チームを設けてプロジェクトの点検をしている。信州の森林の将来像にも関わる。幅広い見地から分析してほしい
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