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- ID:
- 42838
- 年:
- 2018
- 月日:
- 1008
- 見出し:
- 約300年ぶり再建に“ある決断” 興福寺・中金堂
- 新聞名:
- 毎日放送
- 元URL:
- https://www.mbs.jp/news/kansainews/20181008/GE000000000000024744.shtml
- 写真:
- なし
- 記事
- 奈良・興福寺の中金堂が約300年ぶりとなる再建を終え、7日に完成を祝う法要が営まれました。かつての姿を再現するためには、国産の材木にとらわれないという決断がありました
7日、老朽化のため約18年に及ぶ再建工事を終えお披露目された興福寺の中金堂。東西37メートル南北23メートル高さ21メートルの伽藍の中心となる重要な建物です。本尊の釈迦如来坐像や周りには国宝の四天王立像などが納められています
「きれい、豪華絢爛」(参列者) 「中金堂は伽藍の中心ですからね、これがないとしまらないでしょう」 興福寺の中金堂は平城遷都から4年後に創建され、過去に何度も火事に見舞われるなどして今回が8度目の再建です
約300年前の火事の後、本来の姿よりも一回り小さい仮の姿で再建されました。1998年に発掘調査が始まり、仮の中金堂が解体されると奈良時代の礎石などが見つかり、それらをもとに創建当初の中金堂が忠実に再現されました。ところが今回、どうしても再現できないものがありました
「(中金堂内部を見渡しながら)いま見えてるところは9割方が『アフリカのケヤキ』です」(瀧川寺社建築 國樹彰副社長) 中金堂は建物を支える柱などにアフリカ中部の国、カメルーンのケヤキが使用されました。また、屋根などには比較的軽量なカナダのヒノキが使われました。一方、国産の木材は壁の下地など全体のわずか1%ほどしか使われていません
「国内では『大極殿』(2010年復元)を建てられた時点で、もう7〜8メートルの長さの巨木は、もうお堂一つ分は無理だろうと」(國樹彰副社長) 再建には、柱などに使う直径90センチ樹齢400年程度の巨木が少なくとも66本は必要とされていました。林野庁の調査によると日本は樹齢50年程度の人工林約163万ヘクタールをピークに巨木が極端に少ないということです。日本では、ほぼこの樹齢50年の時点で伐採されてしまうのです。全国の神社仏閣に木材を用意してきた材木店でも、いまや扱う木材のほとんどが外国産です
「巨木を(日本の)企業で育てようということになれば、経済規模にあってこないんです。いっぺんに集めろと言われても集まらないもんで、(中金堂の)アフリカケヤキでちょうど10年かかりましたね」(佐藤木材 佐藤典嗣社長) 水に強く加工しやすい日本のスギに比べ、外国産のヒノキは腐りにくくケヤキは割れにくいなどの特徴があり、これまでも寺社建築などに使われてきました。1976年に再建された薬師寺の金堂には台湾産のヒノキが使用されましたが、その後、大量伐採が問題となり伐採が禁止になりました。今回使用したカメルーンの木材も違法伐採が横行したこともあり、いまは伐採禁止となりました。巨木の確保はさらに難しくなっています
外国の木材を使い300年ぶりに創建当時の姿を現した興福寺の中金堂。建設に携わった國木さんは外国の木材の利点を考えると結果として良かったと振り返ります
「柱が36本+30本の66本あって大きな割れはほとんどない。それはよかったですね。寺としてもいい形でできたんじゃないかと思います」(瀧川寺社建築 國樹彰副社長) 中金堂の法要は今月11日まで続き、20日から一般公開されます
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