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- ID:
- 42360
- 年:
- 2018
- 月日:
- 0814
- 見出し:
- 社説:県産ウイスキー 世界市場にらみ開発を
- 新聞名:
- 秋田魁新報
- 元URL:
- https://www.sakigake.jp/news/article/20180814AK0008/
- 写真:
- なし
- 記事
- 県産ウイスキーの製造に向けた事業が、県と民間の協力で進められている。地元産の酵母や大麦などを使用するのが大きな特徴で、2023年にも商品化させたい考えだ。関係者は「国内のトップメーカーと遜色のない品質のウイスキーを造りたい」と意欲を示す。輸出も視野に入れており、新たな秋田ブランドの開発に期待が高まる
事業主体は、飲食店を全国展開する「ドリームリンク」(秋田市)。県内では日本酒やビール、ワイン、焼酎が製造されているが、そうした発酵・醸造技術をウイスキーにも生かしたいと参入を決めた。県内で商品化されれば約70年ぶりとなる。同社が買収した酒造会社「かづの銘酒」(鹿角市)を活用して商品開発に当たる
発酵や蒸留の技術を持つ県総合食品研究センター(秋田市)が全面的に支援する。センターの研究員が中心となり、来年3月までにウイスキー造りのレシピをまとめ、製造装置の設計などを行う予定だ
センターによると、県内の酒造会社2社が1940年代半ばから50年代初めまでウイスキーを生産していた記録が残るが、日本酒に専念するため製造を終えたという
約90年の歴史がある国産ウイスキーは、本場スコットランドやアイルランド、米国、カナダと並び世界の五大ウイスキーに数えられ、高い評価を得ている。国内市場は80年代にピークに達した後、減少傾向が続いたものの、ハイボール人気で2008年に底を打ち、その後は拡大に転じた。輸出も好調で、中国やインドなどで需要が高まっており、県産が市場参入するにはちょうどいいタイミングだ
国内にはウイスキーの蒸留所が大手メーカーを含め20カ所あるが、大半は原料を輸入している。今回の事業では細部までこだわり、他社との差別化を図る計画。二条大麦や水、ピート(泥炭)などは県産をそろえ、シングルモルトとブレンドの生産を目指す
ウイスキーの味や香りを左右する酵母は、センターにオリジナルが多数ある。こうした本県の強みを十分に生かすことが重要だ
課題は県産木材を使った貯蔵だるの確保だ。ウイスキーはたるの中で長期間貯蔵され、熟成することで完成する。代表的な秋田杉にこだわらず、最も適した木材を見極めてもらいたい
事業が軌道に乗ることが前提だが、同社は将来、気候的にもスコットランドに似ている男鹿半島に蒸留所を設ける構想を描いている。実現すれば新たな観光名所にもなるはずだ
ウイスキー造りには時間と根気、それに大きな投資が要る。たやすい事業ではないが、これまで日本人らしい丁寧な仕事が世界に評価される「ジャパニーズウイスキー」を生んできた。世界をうならせる極上の一品を、本県から生み出してほしい
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