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- ID:
- 41118
- 年:
- 2018
- 月日:
- 0325
- 見出し:
- 総天然染料の加賀友禅 尾山神社「菊桜」使い開発
- 新聞名:
- 中日新聞
- 元URL:
- http://www.chunichi.co.jp/article/ishikawa/20180328/CK2018032802000024.html
- 写真:
- 【写真】
- 記事
- 金沢市の加賀友禅作家久恒(ひさつね)俊治さん(68)が、尾山神社の菊桜の花だけを使って染めた加賀友禅を完成させた。化学染料は一切使われていない。北陸先端科学技術大学院大(石川県能美市)の増田貴史助教と、染料を共同開発した。現在、フランス・パリのショールームでも展示され、注目を集めている
全体がピンクに染められた透け感のある長さ約二メートルの布に、濃さが異なる桜の花がちりばめられている。「天然染料でこんなに濃い色が出るなんて、初めは信じてもらえないくらい」と久恒さんは笑う
増田貴史助教写真 加賀友禅には顔料や化学染料が使われる。しかし、化学染料がない時代は植物から染料を抽出していたはず。「昔に戻ってみよう」と三年前、尾山神社に咲くヤエザクラの一種「菊桜」を使って草木染の加賀友禅づくりに取り組み始めた
この菊桜は、かつて兼六園にあった「御所桜」の枝を、金沢市の池内信彦さんが接ぎ木で育てて寄進したもの。池内さんと知り合った縁で、落ちた花を特別にもらえることになった。集めた花は乾燥させ、煮詰めて染料に。「木が柵に囲まれて花が踏まれず、こけむした地面に落ちるので傷まない。花の色素が濃くて染めに向いていた」 しかし、草木染は染料が入った湯の中で布を煮詰めて色づけるのが普通で、筆の先に常温の染料を付けて模様を描いただけでは色が落ちる。加賀友禅ならではの問題にぶつかった
尾山神社の境内に咲く菊桜=昨年5月、金沢市尾山町で(久恒俊治さん提供)写真 昨年、県産業創出支援機構から、北陸先端大で天然染料のインクジェットを開発した増田助教を紹介してもらい、共同開発することにした。色を定着しやすくする触媒を混ぜ、何度も布を染めて調整を繰り返した。ベージュがかった色が、次第に鮮やかなピンクに。初めは発色のため化学染料を数%混ぜていたが、今年一月、とうとう100%天然の染料が完成した
今月末までフランス・パリで開催中の日本の伝統産業を紹介する展示会に、菊桜染めのストールを出展。現地の人からは、染めの美しさだけでなく「化学染料で水を汚さない」と環境の点も評価されたという
量産が難しいため、まだ販売はしていない。「目標は草木染の加賀友禅の着物作り。模様はやはり、桜ですかね。菊桜のように物語があるものを大切に作品にしていきたい」
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