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- ID:
- 31124
- 年度:
- 2014
- 月日:
- 0816
- 見出し:
- 宮崎ビックリ鉄道!高すぎ&香る杉
- 新聞名:
- スポーツ報知
- 元URL:
- http://www.hochi.co.jp/entertainment/20140816-OHT1T50126.html
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 九州のちょうど真ん中、阿蘇山の東に位置する神話の里、宮崎県高千穂町。2008年に廃線となった高千穂鉄道の跡地では、高さ105メートルの高千穂鉄橋を走る観光用スーパーカートが人気だ。屋根もなく、はるか下には川が流れる絶景を望む“絶叫マシン”が話題を呼んでいる。JR九州の観光列
車「海幸山幸(うみさちやまさち)」(座席数51、JR宮崎駅~南郷駅)は、高千穂鉄道の車両2台を改装した“木造”で、年間乗車率8割以上を維持。運行5年目に入り、宮崎県の象徴となりつつある。(久保 阿礼)
「吸い込まれそうだ」「怖くて動けない」―。一見、変わった“列車”が高千穂鉄橋の真ん中で止まった。軽トラックを2台つなげてガソリンで動く、20人乗りの観光用スーパーカート。眼下には岩戸川が流れている。鉄橋の高さは105メートル、長さは354メートル。1972年の完成時は東洋一の高さといわれ
た。映画「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」(84年)では、トロッコが洞窟を疾走する場面があった。そんな場面を想起させる。運転手による記念撮影では、あまりの高さに引きつったような表情を見せる観光客もいた。
1日10便、時速15キロでゆったりと進む。往復5・1キロ、約30分の“小旅行”では、214メートル、489メートルと2つのトンネルを通過する。ひんやりした冷気に包まれ「涼しい~」と歓声が上がった。昨年7月、高千穂鉄橋まで延伸した新コースの乗車数は1万1000人を超えた。絶景とスリルは鉄道ファ
ンにも浸透し、ブームになりつつある。神奈川県鎌倉市から家族で九州巡りという山岳智也さん(45)=公務員=は「あの鉄橋の高さは、ほかでは味わえないですね。本物の自然に触れられて、最高でした」と興奮気味に話した。
1935年2月から89年4月まで国鉄が運営し、その後は第3セクターへ移行した。中でも2003年に導入されたトロッコ列車「トロッコ神楽号」は人気となり、観光客が倍増。だが、05年9月、台風14号の影響で2つの鉄橋が流された。26億円という巨額の再建費用がネックとなり廃線となった。その後、存続
運動をしていたメンバーが08年に「高千穂あまてらす鉄道」を設立。「高千穂観光」では高千穂神社、天岩戸神社に加え、スーパーカートも定着しつつある。
高千穂町出身で作家の高山文彦社長は親しみを込め「あま鉄」と呼ぶ。今後は鉄橋の塗装、隣駅の深角駅までの延長も見据える。「去年7月にコースを伸ばしたら、急激に観光客が増え始めました。いずれは3両編成に増やしたい。夢は全線開通です」
◆内装も外装も木造
車内には木の香りが漂う。観光客は大きめに設計された窓から海を眺めることもできる。車両の内外装には地元の飫肥(おび)杉を400本使用。油分が多いため腐りにくいとされ、江戸時代には船材として使われた。
JR九州が台風被害を受けて廃線となった高千穂鉄道の車両2台を約1億5000万円をかけて改装した観光列車「海幸山幸」。1号車を「山幸」(定員21人)、2号車を「海幸」(定員30人)という。運行5年目に入るが、夏休みも満席状態で宮崎県南部の海岸線を1日1往復する。
JR九州の観光列車は全部で9種類。「SL人吉」(熊本~人吉)、特急「指宿のたまて箱」(鹿児島中央~指宿)など高い人気を誇るが、その中でも「海幸山幸」の乗車率は86%でトップを維持する。貸し切りでは、大分県や九州南部の霧島山中央部にある活火山の新燃岳を一周するコースも取り入れ、結
婚式やコンサートも行う。
「この木の香りが生命線です」。運行開始から尽力したJR九州宮崎総合鉄道事業部の川原淳一部長(58)が言う。木の質感を大切にするため、清掃やメンテナンスに時間をかけている。手作業で床などを磨き上げ、不燃液を染み込ませていく。外装は開業時より色あせたが「車両の色合いが変わると、趣
があっていい」という声もある。
1、2号車にあるフリースペースのソファに座って記念撮影も可能。川原部長は観光客からカメラを預かると、海をバックに何度もシャッターを切った。日南市など周辺自治体とタッグを組み、クーポンなどの特典や車内では紙芝居を実演するイベントもある。高千穂鉄道のDNAを受け継いだ「海幸山幸」は、宮崎
県の象徴になりつつある。
◆高千穂あまてらす鉄道 宮崎県西臼杵郡高千穂町三田井1425の1旧駅舎内。高速道路で宮崎市から2時間30分、福岡市からは3時間30分、熊本市からは約2時間。熊本や福岡からは特急バスもある。環境整備費に1人100円。維持管理費で高校生以上1200円、小・中学生が700円、未就学
児が300円。悪天候で運行できない場合があるので要確認(TEL0982・72・3216)。
◆海幸山幸 2009年10月10日から運行開始。名前は日本神話の「海幸彦、山幸彦」に由来。宮崎駅発で青島、飫肥、日南を経て南郷駅まで約55キロ、片道約1時間40分で運行。「日南レール&バスきっぷ」では往復JRを利用、往路JR+復路バス、往路バス&復路JRと3通り(大人2870円、子
供2250円)。8月は水曜日以外、9月は土日祝日に1日1便運行。いずれも午前10時6分宮崎駅発、復路は午後3時35分南郷駅発。
◇高千穂町 高千穂神社、天岩戸神社などがあり、人気の観光地。熊本県から訪問する方が移動距離は短い。日本神話では神々が降臨した伝説があり、高千穂峡に代表される渓谷の町として知られる。高千穂峡は阿蘇山の噴火によって約7キロの渓谷となり、複雑な形をした奇岩、岩体に入った柱状
の割れ目「柱状節理」が見られ、ボートで観光もできる。10~12月の国見ケ丘(標高513メートル)は雲海の絶景場所として有名。11月中旬から2月8日まで秋の実りに感謝し翌年の豊穣(ほうじょう)を願う「夜神楽」がある。人口1万3276人。
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