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- ID:
- 29877
- 年度:
- 2014
- 月日:
- 0311
- 見出し:
- 静岡から石巻に戻り、恩返しの営業
- 新聞名:
- 中日新聞
- 元URL:
- http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20140311/CK2014031102000086.html
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 東日本大震災の津波で事務所や工場が被災した天竜木材(浜松市東区)の宮城県石巻市にある石巻支店は二〇一二年夏に事務所を建て直し、材木の製造・販売事業が軌道に乗ってきた。今年一月には、かつて磐田市の同社営業所に勤め、震災後に退職して実家のあった石巻市に帰っていた阿部博
さん(43)が、支店の営業担当として戻ってきた。復興需要の中で、人材確保に悩む会社に恩返ししたいと考えている。
製紙会社や製材会社が集まる石巻湾に臨む工業団地。その一角にある石巻支店の敷地には、丸太や材木がうずたかく積まれていた。復興需要で震災前より販売が三割伸び、工場では従業員が材木加工に追われている。その中に、「下っ端の気持ちで一から頑張りたい」と照れ笑いを浮かべ、製材の
品質を確認する阿部さんの姿があった。
石巻市東部の漁師町にある実家が津波にさらわれ、跡形もなくなった。無事だった両親は同市街地に家を建てたが、周りに知人はいない。その寂しさを、阿部さんは感じ取っていた。
震災から一年がたった一二年春、磐田市の営業所にいた阿部さんは、二十四年間勤めた天竜木材を退社した。「長男だから親の近くにいた方が良い。生活を一回リセットしよう」と決心し、静岡県から故郷へ帰った。
知人から紹介されたアルバイトを続け、新しい生活にも慣れてきた昨年末、天竜木材時代の先輩から電話があった。「五十歳になってもバイトをやってるつもりなのか。もう一回営業をやらないか」
写真
材木販売の伸びで人手がいる半面、復興が進む東北では、土建業や運送業などへの人材の流出も激しい。支店長の渥美一男さん(55)は「人件費が上がっており、優秀な人材の雇用が難しい」と話す。支店でもこれまでに四人が退社しており、即戦力の営業マンを探す中で、地元に戻っていた阿部さん
に声が掛かった。
「二十年以上世話になってきた会社が困っている。もう一回貢献しよう」と考え、再入社を決めた阿部さん。今は岩手県や山形県にある製材会社を相手に「石巻の企業の一員として、地域を盛り上げるために頑張っていきたい」と営業に駆け回っている。
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