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- ID:
-
29434
- 年度:
- 2014
- 月日:
- 0114
- 見出し:
- まっすぐブナの不思議 ―ドイツのブナと日本のブナ―
- 新聞名:
- 荘内日報
- 元URL:
- http://www.shonai-nippo.co.jp/cgi/ad/day.cgi?p=2014:01:14
- 写真・動画など:
- なし
- 記事内容
- まっすぐブナの不思議 ―ドイツのブナと日本のブナ― 平 智
鶴岡市の木は何かごぞんじですか? そう、「ブナ」です。平成の市町村合併によって誕生した新しい鶴岡市は広大なブナの森を擁する市になりました。それをきっかけに市のシンボルツリーをブナに決めたのです。ちなみに旧朝日村の木がブナでしたから、新市はそれを発展的に引き継いだといってもいいか
もしれません。
ブナの実を食べたことがありますか?じつはすごくおいしいのです。生(なま)でもいけますが、ローストするととても香ばしくてたまりません!ブナの実は、森に暮らすクマなどの野生動物たちにとって格好の食料になっているようです。しかし、残念ながらブナは毎年たくさん実をならせるわけではありません。豊作
の年は数年に一度くらいしかやってきません。
ブナの豊凶について精力的に研究を展開している山形大農学部の小山浩正教授の予測によると、「2013年はところによっては豊作」とのことでした。そういえば昨秋、クマさんはあまり里へとお出ましになりませんでしたね。きっと森の中に冬眠に向けて食べ貯めるのに十分な量のブナの実があったのでしょう。
小山先生はブナの実を「ブナッツ」(ブナとナッツを組み合わせた造語)と名づけ、さらに、その種皮を手で器用に剥(む)いて、食べられる部分(胚乳)を取り出すアクティビティーを「ブナリンピック」と呼ぶことを提唱しています。次の豊作年まで少なくとも数年前後あるので、本当のオリンピックみたいですね。…と
いうわけで、次のブナリンピックはぜひ鶴岡に誘致しましょう!合言葉は、「TSURUOKA 2020」!!
毎年ドイツの森歩きをしていて不思議に思うことがあります。日本のブナは幹が曲がっていたり、枝がのた打ち回っていたりすることが多いのに、ドイツのブナは「まっすぐ」なのです。日本のブナがまっすぐでないのは、少し前の時代までたくさんの薪(たきぎ)を確保するために盛んに枝を繰り返し切ったからかも
しれません。そのせいで、「あがりこ」と呼ばれるモンスターのような樹形のブナが多くなったとも考えられます。ドイツではそういうことはあまりなかったのかもしれません。しかし、それにしてもドイツのブナの幹はすごく「まっすぐ」なのです。
これは、ブナ自身の「性格」の問題なのか、それとも「環境」のせいなのか、興味がわくところです。ドイツのブナは生まれながらにしてまっすぐ伸びる性質を持っているのでしょうか。それとも、ドイツの自然環境がまっすぐ伸びるのに適しているのでしょうか。
それぞれのブナの遺伝子を解析してどの程度異なっているのかを調べてみることもできる時代です。でも、もっと実感を持って確かめるためにはやはり、ドイツのブナを日本に、日本のブナをドイツに、実際に植えて育ててみるといいでしょう。それを実行に移すためには、きっと植物検疫に関わる手続きも必要で
しょうが、それよりもなによりも長~い時間が必要ですね。私たちの次の世代の人たち、いや、もっと後の世代の人たちが結果を確かめてくれることでしょう。そんな壮大なスケールの実験もぜひやってみたいものですね。
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