田家:太陽活動の周期については、黒点の変化傾向を元にした11年周期が有名です。しかし、太陽活動の強弱をスペクトル分析で調べてみると、これ以外にも22年、87年、208年、約500年、約700年、1000年、さらに、1500年~2300年といった周期性が現れてきます。
なぜ、このような周期性があるのかについては、太陽物理学の世界でもまったく未知の世界です。昨年、木星・土星・天王星・海王星といった質量の大きい外惑星の軌道が影響しているのではとの論文が発表になり、天文学者は注目しています。とはいえ、依然として仮説の段階です。
そして、太陽活動の周期とはいくつかのサイクルが複合的に重なり合っているものと考えられます。ですので、太陽活動の長期的な周期は定期的なものになっていません。「小さな氷河期」(小氷期)の間の3つの活動低下期(シュペーラー極小期、マウンダー極小期、ダルトン極小期)も、低下期間も低下の幅
も異なります。
今後は太陽活動の低迷期が訪れる?
今後の太陽活動はどのような周期に入るのでしょうか。
田家:太陽活動の低迷については、現在、太陽物理学者の間ではもっともホットな話題のひとつになっています。太陽黒点周期は太陽活動が活発化(低下)すると短く(長く)なる傾向にあります。先ほど申し上げたように、一般的には黒点周期は11年ですが、1996年から2010年の間は12.6年と長くなりました。
このことから、17世紀後半に到来したようなマウンダー極小期(1645年から1715年までの70年間で太陽表面から黒点がほとんど消えた時期)といった太陽活動低迷期が来るのではないかとの予想があります。
ただし、太陽の日射量の変動はそれほど大きくありません。11年周期では0.1%程度です。マウンダー極小期にどれだけ低下したかははっきりと分かっていませんが、太陽と同じタイプの恒星の変動幅からせいぜい0.2%程度であろうとの仮説もあります。
この程度の変動では、直接的な地球全体の平均気温の変動は少ないとみられます。むしろ、太陽日射の中で紫外線量の増減幅が大きいことから、太陽活動の強弱が地球環境の中で増幅されているのではないかとの説があります。ただし、これは科学的に未知の世界です。
台風や竜巻、豪雨や豪雪、あるいは高温など、異常気象と呼ばれる現象は世界的に見られるだけでなく、日本でも最近顕著に発生している印象がありますが、今後も異常気象は増えていくのでしょうか。
歴史的に続いてきた異常気象
田家:異常気象は、定義としては「30年に一度あるかないかという頻度での大雨・大雪・降水といった気象現象」を指します。近年、異常気象の発生が目立つ印象を持ちますが、日本や世界のいずれかの土地で起きるとすれば、確率的にみて増えているのか、確認する必要があります。また、観測機器の充
実といった面もありそうです。
2011年にIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は「気候変動への適応推進に向けた極端現象及び災害のリスク管理に関する特別報告書」
を発表しています。この中で、「気温の上昇が起きる可能性は高い」「極端に強い雨が増加した地域が、減少した地域よりも多い可能性が高い」「世界中の沿岸域で極端な高潮が増えた可能性が高い」としていますが、一方で「熱波が増加した可能性は中程度」「干ばつは一部の地域では増加したものの、別
の地域では減少しており、確信度は中程度」「熱帯低気圧(台風やハリケーン)の活動が増加、竜巻・雹の増加、洪水の変化の確信度は低い」としています。
台風や熱波といったわれわれが肌で感じるような自然災害について、その多くが、地球温暖化に起因するかどうかは科学の知見として曖昧なままです。
以上を見てきますと、異常気象と呼ばれるものの多くが過去の歴史から続いてきたものと思われます。地球温暖化が起きた時に増加すると見込まれる異常気象は、「高温」「降水量が増える地域の偏在」「高潮」といったものです。
昔のようにできるだけ自然な環境に戻せば、異常気象は防げるのでしょうか。
田家:気候変動の要因には、以下のものがあります。1つ目は、内部変動です。これは、物理的な「ゆらぎ」によるもので、エルニーニョ現象などがこれに当たります。3~7年サイクルで起きてきました。また、寒冷化した時代にエルニーニョ現象の年の頻度は増えています。これはビャークネス・フィードバックといっ
て、大気が冷たくなった効果は太平洋西部のほうが太平洋東部(赤道湧昇がある)よりも大きく、エルニーニョ現象が発生しやすくなるためです。
2つ目は外部要因です。これは、太陽活動の変化や火山活動といった自然要因のことです。
そして3つ目が人為的要因(温室効果ガス、公害による硫酸エアロゾル)です。
このように、異常気象の原因となる気候変動は、人為的要因がなくとも自然要因だけでも発生しうるのです。
また上の各要因はさまざまな組み合わせがあります。21世紀に入って地球全体の平均気温は横這いになっています。これを「温暖化の中断問題」と言って、気候学者は頭を悩ませています。恐らく内部変動や自然要因により一定程度相殺されているためでしょう。
狩猟採集生活を営むとすると、1キロ平方メートルあたり、人間が生存できる人数は0.1~1名といいます。この生存規模が、農業を営むことで18世紀の欧州で40~60名へと増加しました。人間が自然を破壊するという見方もありますが、本当に破壊しないのなら、狩猟採集民当時の400万人程度しか生存で
きません。
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