v10.0
- ID:
- 28652
- 年度:
- 2013
- 月日:
- 0918
- 見出し:
- 1000年の技継ぐ浅沓司
- 新聞名:
- 朝日新聞
- 元URL:
- http://www.asahi.com/area/aichi/articles/MTW20130918241010001.html
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 伊勢神宮のおひざ元、三重県伊勢市には全国でも珍しい職人がいる。
「浅沓(あさぐつ)司」の西澤利一さん(63)。神職の足元には欠かせない浅いこしらえのくつ作りを、1千年以上前から変わらないやり方で続けている。
木製と見まがうような黒光りする部分は和紙でできている。足の寸法に合わせたヒノキの木型に、四国産の和紙を十数枚、柿渋を混ぜた糊(のり)で張り重ねる。十分な厚さになったら木型から外し、スギとクスノキの板を底につけ、漆を塗っては研ぐ、という作業を繰り返す。一足を仕上げるのに30以上の工
程があり、約1カ月かかるという。
伊勢神宮の場合、宮域が広いうえ、玉砂利が角張っているため傷みが早い。夜の祭事で過って履き損じると、割れたり、へこんだりもする。「工芸品でありながら消耗品。丈夫さを追い求めるためには手抜きができません」
元々は紙玩具の職人だった。34歳の時、知人の勧めで、当時も伊勢でただ一人だった浅沓職人に弟子入りした。3年目に師匠が他界した後は、失敗を繰り返しながら技を磨いた。
近年はプラスチック製のものが増えている。雨や雪の日はいいが、履き心地が悪く、歩く音も違うらしい。20年ごとの式年遷宮のたび、神職には新品の浅沓が支給されるが、それ以外はおのおので、そろえなければならない。
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