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- ID:
- 27777
- 年度:
- 2013
- 月日:
- 0531
- 見出し:
- アユ遡上 鴨川に『道』
- 新聞名:
- 朝日新聞
- 元URL:
- http://www.asahi.com/area/kyoto/articles/MTW1305302700001.html
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 京都市の鴨川を遡上(そじょう)する、天然アユが増え始めた。研究者や漁協などが協力し、川の堰(せき)や段差に魚道を設ける試みを2011年から続けてきた成果だ。年々、上流へとさかのぼっており、今年は29日、市街地の丸太町橋近くに魚道を設置した。
■段差に「階段」やロープ 成果3万匹
京都御所にほど近い丸太町橋の下流にある「落差工」の前で29日朝、作業が行われた。治水のために川の流れを緩める段差だが、高さ1・2メートルあり、アユにとっては遡上を遮る「壁」になっていた。
研究者らでつくる「京の川の恵みを活(い)かす会」のメンバー数十人が川に入り、杉の間伐材で幅約3メートル、高さ1・2メートルの箱形の魚道を組み立てた。箱の中に土嚢(どのう)と石を詰めて階段状にして、アユがのぼりやすくなっている。
活かす会代表の竹門康弘・京都大防災研究所准教授(55)によると、きっかけは07年、指導学生が桂川との合流点近くにある龍門堰(高さ1・5メートル)直下でアユが跳ねているのを見つけたことだった。
アユは0・6メートル程度の段差は跳び上がるが、それ以上は難しい。府や京都市、漁協、森林組合などで会を結成し、「遡上復活作戦」が始まった。11年は龍門堰に魚道を作り、約2万匹が遡上し、四条大橋近くの段差(落差0・7メートル)の手前までやってきた。12年は四条にも魚道を設け、3万匹の
遡上が確認されている。
今年は丸太町橋近くの木製の魚道に加え、三条大橋近くの段差(同0・9メートル)にも、直径3センチのロープ20本を垂らして、アユが上がりやすいよう、緩い流れをつくった。竹門准教授がお風呂で思いついたアイデアだという。
魚道は毎年、アユが遡上する時期に合わせて5月に設置し、7月には撤去している。今年度は資材費として約160万円を府と市が補助した。
1935年に大水害があった鴨川では、河川改修が進められ、多くの落差工が設けられた。80年代までは工場や生活排水で水質も悪く、アユは来ないものだと思われていたという。竹門准教授は「鴨川で天然遡上のアユが釣れて、人々がまた鴨川の恵を楽しむ。そういう自然と人のつながりを回復させたい」
という。
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