v10.0
- ID:
- 27231
- 年度:
- 2013
- 月日:
- 0327
- 見出し:
- 気比の松原100年構想 長期保全へ活動連携大切
- 新聞名:
- 福井新聞
- 元URL:
- http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/editorial/41325.html
- 写真・動画など:
- なし
- 記事内容
- 日本三大松原の一つ、敦賀市の名勝「気比の松原」の長期保全を目指す整備基本構想となる「気比の松原100年構想」がまとまった。松くい虫被害や樹勢の衰退が危惧されている中、自然景観や保安林機能をどう守っていくのか。行政と市民が一体となって保全への意識を高めるとともに、連携した活動
をいかに推進していくのかが課題となる。
気比の松原(福井県敦賀市)は、林野庁近畿中国森林管理局福井森林管理署が管轄する国有林で、三保の松原(静岡県)虹の松原(佐賀県)と並んで日本三大松原に数えられている。敦賀が誇る文化遺産で、古くから市民の憩いの場や散策の場、観光地として親しまれているほか、市街地を潮害など
から守る保安林としての役割を果たしている。
広さ32ヘクタールのエリアには、クロマツやアカマツなど約1万6千本が群生。しかし、松くい虫や風雪の被害で毎年200~300本が枯れているほか、マツの生育に不向きな土壌の富栄養化が進んで樹勢が衰退したり、枝が重なって日光が当たりにくくなり健全な成長を妨げる傾向が強まるなど、自然景観
や保安林機能の維持が不安視される状況にある。
ここで大事なことは、課題や現状を学び合い、保全の必要性に理解を深めることだろう。このよりどころとなるのが「気比の松原100年構想」である。福井森林管理署が中心となり、市民団体や有識者、行政などと検討を重ねてまとめ上げた。現地調査の結果や整備目標、管理手法、樹木育成などを一大
ビジョンとして細かく明示。長期保全に向けての熱い思いを各項目に凝縮したものといえよう。
取り組み内容は、松くい虫防除や適正な樹林密度への調整伐採、学術的な指導、新たな植林に向けた苗木づくり、土壌の富栄養化を避けるための落ち葉かき、美化作業、森林環境教育の実施など幅広い。そして、多岐にわたる取り組みを行政や市民団体、企業、観光関連機関、研究機関、教育機関
などが分担して推し進めていく方針が盛り込まれた。
人の手が継続的に根気よく、丁寧に入らなければ長期保全にはつながらない。行政がけん引していくことはもちろんだが、落ち葉かきや美化作業は市民や企業も積極的に参加できる分野であり、それぞれの役割分担をしっかりと認識しながら、活動を有効に結びつけていくことが肝心だ。そのためには絶えず
取り組み状況を共有し、検証を重ねて、よりよい方向性を見いだしていくことが大切だろう。
保全活動を通して生み出される連携意識や郷土への愛着、さらには全国に自慢できる自然美といった、かけがえのない財産を次の世代につないでいく責任は重い。100年構想のテーマに掲げた「クロマツとアカマツのおりなす“白砂青松の松原”の再生」の言葉を、いま一度かみしめたい。
..