v10.0
- ID:
- 26431
- 年度:
- 2013
- 月日:
- 0109
- 見出し:
- 四季を問わず桜が咲く、著名人に愛される秘境の癒し空間
- 新聞名:
- NETIB NEWS
- 元URL:
- http://www.data-max.co.jp/2013/01/09/post_16449_tk_ft_1.html
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- ほぼ1年中桜を鑑賞できる桜の森>
熊本県荒尾市JR長洲駅から車で5分。車道を少し離れたところに、現代の桃源郷がある。桃源郷とはいっても、植えられているのは92種にもおよぶ桜の樹だ。その本数はおよそ900本。日本料亭てら岡の寺岡直彦社長が故郷に造った「桜の森」のことである。
寺岡社長は、出生地である荒尾市高浜の山林、雑木林を自ら開拓、整備し、この森をつくった。地域の方々のボランティア活動に支えられ、8年の歳月をかけて、ようやく2012年3月に開園に至った、知る人ぞ知る、癒しの森だ。盛和塾の稲盛塾長を始め、多くの著名人がこの地に桜を植樹するために訪れ
た。盛和塾の塾生からも、天然記念物の桜(荘川桜、臥竜桜、淡墨桜、神代桜)の寄贈を受け、この4月には多数の塾生が塾長とともに現地で花見を愉しんだ。
地元住民をはじめとする一般人にも開放して散策を愉しんでもらっている。入口に立つと「営業時間内は園内を開放しています。自由にご覧になられてください」という文言が目に入る。その言葉にいざなわれるようにして園内に足を踏み入れると、厳かな気配に身を包まれた。
ここでは夏季以外は、季節に応じて桜を鑑賞できる。桜が咲かない夏は蛍を鑑賞してもらえるように、1万2,000坪の園内に100m以上の小川をつくって稚蛍から育てている。見遣ると、ほっそりとした枝の先に、可憐な花が咲いている樹があった。春に満開に咲き誇るばかりが桜ではないと、まずは考えを改めね
ばならないと思った。
<出会いの1つひとつを縁に変えて>
考えを改める、と言えば、寺岡社長も人にさまざまな影響を与え、自分を変えたい、と思わせてくれる人物だ。画家の道を料理の道に変え、弱冠29歳で県から皇太子殿下への献上料理担当役を任命されるに至った、という略歴自体が、「料理人の修行には最低10年はかかる」という考えを改めさせてくれる
。
しかし、寺岡社長の柔和な表情には、そのような凄みによる近寄り難い雰囲気はない。社訓の、「お客様に喜ばれてこそ」という精神、そして、社長が世わたりの極意と考える柳生一族の家訓「小才は縁に出合って縁に気づかず 中才は縁に気づいて縁を生かさず
大才は袖すり合(お)うた縁をも生かす」という精神を、そのまま体現しているかのようだ。寺岡社長に出会った人は、まず、温かいもてなしに触れ、社長の生き方の精鋭さに驚き、惹かれていく。「死力精励」――それは社長が料理の世界に飛び込んだとき、死ぬ気で修行に取り組んで成功を収めた体験から
生まれた造語だ。こんな真摯な生き方を知って感銘や恩を感じた人は多い。
「桜の森」もまた、多くの人々に感銘を与え、心を動かした。人が後世に生きた証を残せるのは、除籍簿の保管というかたちをとってもせいぜい150年。しかし、桜は樹齢そのものが1000年から2000年にもおよぶ。集大成を意識した寺岡社長は、出生地に思いを馳せ、後世に自分の生き様をかたちとして残すために尽力したいと思った。残すのであれば、ぜひ大好きな植物を、なかでも日本人の精神を象徴する桜を。そう決めた後の行動は早かった。まず、所有していた雑木林を開拓。そして周辺の土地を購入し、開拓した。日頃から寺岡社長の想いに賛同してくれている人たちが、桜の苗や購入資金を送ってくれた。
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