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- ID:
- 33274
- 年度:
- 2015
- 月日:
- 0612
- 見出し:
- 【みちのく会社訪問】北上プライウッド株式会社上市)
- 新聞名:
- 産経ニュース
- 元URL:
- http://www.sankei.com/region/news/150612/rgn1506120083-n1.html
- 写真・動画など:
- なし
- 記事内容
- ■林業振興の期待背負う新工場
岩手県中南部に位置する北上市の後藤野工業団地内に、県内の林業振興の期待を背負った「結(ゆい)の合板工場」が建設された。敷地面積は約8・1ヘクタール。工場の建物は長さが273メートル、幅が45メートルもある。
林孝彦専務は「戦艦大和がそっくり入る広さ。新しい設備を導入した世界でも最新鋭の工場。結の合板工場という名前には、岩手県の森林・林業と共存する意志を込めた」と話す。
同社は合板業界で国内最大手のセイホクグループのメンバー。これまでの合板工場は、原料材の輸入の便が良い沿岸部に整備されてきた。北上市に建設された新工場は、国産材だけを原料とする内陸立地の合板工場としては、岐阜県の森の合板協同組合に次ぎ国内では2カ所目。今年5月から本格
稼働に入った。
◆県産材の受け皿に
セイホクグループは、東日本大震災で三陸沿岸の大船渡市にあった2つの合板工場が津波で被災し、再建を断念した。両工場は年間約10万立方メートルに上る県産の丸太を使って合板を製造してきた。結の合板工場に県内の林業振興の期待がかかるのは、県産材の新たな受け皿となるからだ。
工場の総工費は約78億円で、震災復興関連で国が約31億円、復興支援で県が約15億円、企業立地で地元の北上市が約4億円の補助金を支出している。主に県産のスギやカラマツ、アカマツを使い、縦1820ミリ、横910ミリの規格で、12ミリや24ミリなど厚さの異なる6種類の国産材100%の合
板を製造する。
7月中には稼働率を100%にする予定で、年間で330万枚の合板の生産を目指している。原材料の県産材は県森林組合連合会が供給窓口となる。傘下の19の森林組合と連携して県内に8カ所に設けられた保管所から通年で安定的に供給するという。
工場の従業員約40人のうち35人が地元からの新規雇用だ。今月2日に工場内で開かれた竣工式には、岩手県の達増拓也知事や北上市の高橋敏彦市長のほか、林野庁や林業関係者らを含む約200人が出席した。
式典であいさつに立った同社の井上篤博社長は「地域の森林資源を活用することで、林業の復活、地方創生にもつながると考えている」と意気込みを語った。達増知事は「県産材の供給先が安定的に確保され、関連産業への発展にも寄与する」として、新工場の立地を歓迎した。
◆「白衣が汚れない」
「白衣を着ていても汚れない工場」。井上社長の号令のもとで建設された工場内は天井からの自然採光があり、木材を扱う工場にはつきものの木片やおがくずも見当たらない。工場は当面、木造建築で強度が必要となる床や壁、屋根下地に用いられる構造用合板の生産に力を入れる方針。
将来はカラマツの強度を生かしたフロア台板や型枠用合板の生産も手がけ、従業員も100人体制に増やす計画もある。地方創生には地場産業の活性化が不可欠。県内の林業は若い担い手が増えつつある。その意味でも注目の工場だ。(石田征広)
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【企業データ】岩手県北上市和賀町後藤2地割112の1。ホクヨウプライウッド(本社・東京、井上篤博社長)など合板業界の国内最大手で知られるセイホクグループの企業4社が出資して、平成26年に設立された。資本金1億円。(電)0197・73・8825。
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【取材後記】合板工場の取材は初めてだった。木にはA~Dの等級があり、最も良質なAは製材され、これに次ぐBが合板の原材料となり、Cは木材チップ(細片)、Dは燃料のペレット(塊)になることを初めて知った。同時にBの割合が最も高いことも。都道府県で2番目に広い岩手県は森林資源が豊富だ。林業関係者はじめ、竣工式に知事が出席した県の「結の合板工場」へかける期待の高さがうなずけた。
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