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- ID:
- 26053
- 年:
- 2012
- 月日:
- 1203
- 見出し:
- まちなみ活用 価値の共有を出発点に
- 新聞名:
- 信濃毎日新聞
- 元URL:
- http://www.shinmai.co.jp/news/20121203/KT121201ETI090003000.php
- 写真・動画など:
- なし
- 記事内容
- 地域の歴史や風土に根ざした「まちなみ」を保存し、活用する。そんな活動が少しずつ広がっている。
文化財や名所旧跡ではなくても、古民家など昔からある建築物が地域らしいまちなみを形作っている。だが、その価値が埋もれたまま、取り壊されてしまうことが多い。
建築士や学生が調査を始めるなど新たな動きもある。住民と一緒になって価値を共有し、そこを出発点に、まちなみ保存と活用の仕組みを作りたい。
信大経済学部の武者忠彦准教授のゼミと県建築士会佐久支部は、佐久穂町の歴史ある建物群を調査し、活用方法を探っている。
佐久穂町は林業の拠点の一つとして栄えた。みそ・醸造会社や歓楽街の料亭など、往時を伝える建物が残る。建築士が建物を調査する一方、学生が住民に建物の歴史などを聞き取っている。
松本市は、民間所有の歴史的建造物を保全・活用するための施策づくりを始める。県建築士会松筑支部も土蔵や町家の活用を考えるシンポジウムを開催した。古民家を改修し、再利用する動きは県内各地にある。
しかし、乗り越えるべき課題は多い。一つは地元住民との意識のギャップだ。専門家に価値があると言われても、日常見慣れているだけに納得しにくい。
活用するための費用をどう工面するかも難しい。所有者が負担を背負うようでは二の足を踏む。
兵庫県は古民家の再生促進支援事業に取り組んでいる。おおむね築50年以上で、伝統的な木造建築技術によって建設された住宅が対象。専門知識を持つ建築士(ヘリテージマネジャー)らが調査、修繕や活用の提案をする。費用は県が負担する。
1千万円を上限にした改修費用のうち、3分の2を県と市町が負担する制度もある。
ただし、所有者は提案までは要望するが、実際に改修に踏み切る例は年間1、2件ほど。建築物の価値について、専門家ら「外の目」と、所有者や地元市町との間に意識の隔たりがある。
兵庫県の取り組みは、阪神・淡路大震災で歴史ある建物が多く被災したのがきっかけだ。
同県建築士会はヘリテージマネジャーの養成を進める。「時代は今や、スクラップ・アンド・ビルドからストックの活用に移行しつつある」との認識からだ。
失って初めて分かるのが建築物文化だとすれば、いま身近にある建物にしっかり目を向けたい。
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