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- ID:
- 26002
- 年:
- 2012
- 月日:
- 1126
- 見出し:
- 一杯のスープ 「ゼロ」から作る 10カ月かけ体験型イベント
- 新聞名:
- 東京新聞
- 元URL:
- http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/CK2012112602000131.html
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 静岡県沼津市を中心に開かれた、全六回の体験型イベント「一杯のスープをつくる時間」。二月にスープの器になるヒノキを伐採し、農作業や塩作りなどをして、今月中旬の最終回に最高の一杯を味わった。ユニークな取り組みを取材した。
(発知恵理子)
沼津市の自然派志向のレストラン。イベント「一杯のスープをつくる時間」の最終回には、県内や東京から二十三人が参加した。二十代から四十代が中心で、談笑しながら一つ一つの料理を味わった。
テーブルに並んだのは、サラダ、イノシシ肉のソテー、シカ肉のトマトパスタに、ヒノキの器に入った野菜スープなど。ほとんどの食材は静岡県東部でとれたものだ。
参加者らはこの食事をするまで、五回にわたってさまざまな体験をしてきた。同県御殿場市の派遣社員大久保里恵さん(36)は、「毎回、楽しい中にも考えさせられる要素がたくさんあった。時間をかけて体感してきた分だけ、おいしく、価値がある」と一気にスープを飲み干した。
初回は今年二月、天城山でチェーンソーを使って間伐作業をした。参加者が切ったヒノキは、同県伊豆市の木工作家、有城利博さん(38)が九カ月かけてスープの器に仕立てた。有城さんはボランティアとして荒れた山の伐採も手伝っており、森の整備と間伐材の有効利用を進めている。
五月は、猟師で自然ガイドの井戸直樹さん(36)の案内で、富士山の麓の原生林を歩いた。近年はイノシシやシカの増加で低木が育たず、畑では農作物に深刻な被害が出ている。井戸さんは「山と街はつながっている。捕獲した獣を食べることが、問題解決への行動にもなる」と話す。
スープの材料になるジャガイモは、天候不良で植え付けができなかった。このため同県富士宮市の畑で、ニンジンなどの収穫を体験。十月には駿河湾の海水を薪で炊いて網ですくう、伝統的な手法で戸田(へだ)塩を作った。
地域を流れる狩野川で、カヤックや渡し船に乗る回も。川遊びや富士山の風景を満喫し、自然の貴重さを体感した。
一連のイベントを企画したのは、沼津駅前の商店街で青果店「REFS(レフズ)」を営む小松浩二さん(33)。東京の食品会社でバイヤーを務めた後、三年前に沼津市へ戻った。「つくる人と食べる人をつなげたい」と、近郊の二十三軒の農家から直接仕入れた野菜を、店頭やネットで販売している。
小松さんはイベントの狙いを「無理にエコ活動をしても続かない。山、畑、川、海での楽しめる体験や奥深い物語を、一杯のスープに詰めて表現した」と話す。
「少しでも気付くことがあって、行動してもらえたらうれしい。ただ普段の食事を変えることでも、担い手の少ない有機農家やきこり、猟師を支えることになる」と小松さん。今後は長期ではなく、地元や東京都内で単発のイベントを企画したいという。
イベントの料金は各回で異なり、千五百円から四千円程度。小松さんのホームページは「フジヤマベジ」で検索。
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