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- ID:
- 25842
- 年:
- 2012
- 月日:
- 1109
- 見出し:
- 別荘地「えみの島」に輝き
- 新聞名:
- 長崎新聞
- 元URL:
- http://www.nagasaki-np.co.jp/news/kennaitopix/2012/11/08100002008438.shtml
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 松浦市福島町の最奥部に広がる別荘地「えみの島」が開発から40年を迎え、建設ラッシュを迎えている。投資目的の地権者が宅地を手放し荒廃は進行。しかし自然に囲まれたロケーションなどの魅力が癒やしを求める人たちを引きつけ、輝きを取り戻し始めている。
潮騒と鳥のさえずりしか聞こえない静かな海沿いに、金づちの打音や工具の鋭い音が響き渡る。眼前に広がるのは波穏やかな伊万里湾。向こうには2本の柱からケーブルが伸びる鷹島肥前大橋もうかがえる。
10月中旬。ここで新たな別荘の建設が始まった。会社経営者の男性(63)=佐賀県伊万里市=がほほ笑む。「地中海をイメージしたおしゃれな建物の誕生が楽しみだ」。現場が気になり、ほぼ毎日のように足を運んでいる。
東京の開発業者が進出を表明したのは高度経済成長末期の1971年。一帯の山林を買い上げ、約18万平方メートルに約400区画を造成。ヨットハーバーや集合住宅の建設計画もあった。
しかし、直後の石油ショックで景気が冷え込み倒産。宅地は完売したが、地価の値上げを見込んだ購入者が多く、別荘はほとんど建たなかった。地権者は任意団体「えみの島発展促進会」をつくったが敷地内は荒れていく一方だった。マンホールが盛り上がったり、路肩が崩れかけたところもある。大半の宅
地は所有者名を記した札だけが立ち、木々が生い茂る。地権者も高齢化し「お荷物」として促進会に寄贈を申し出るケースが相次いでいた。
「このままでは(促進会の)自然消滅が見えている」。改革に乗り出したのは副会長で2年前から管理事務所長を務める川原博明さん(70)。ホームページを開設し、手作りのリーフレットを作成。会報で地権者に厳しい現状を伝え、別荘オーナーの新規開拓に協力を求めた。伸びきった木々を切り、伊万里
湾を見下ろす眺望の確保にも努めた。
こうした努力が実を結び、今年に入り5年ぶりとなる別荘の新築が実現。着工済みも含め、さらに5軒が建設予定だ。新たなオーナーはいずれも福岡県や佐賀県で仕事に打ち込む人たち。眺望の良さと近くに船を係留できる点、頻繁に通える距離が決め手という。
厳しい経済情勢にもかかわらず進む建設ラッシュは、自然に囲まれた本来の価値が多くの人に認められた結果といえる。「この地の魅力をさらにアピールしたい」。川原さんは手応えと可能性を感じている。
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