v10.0
- ID:
- 25841
- 年:
- 2012
- 月日:
- 1108
- 見出し:
- 荒れ山から神事の木
- 新聞名:
- 東京都
- 元URL:
- http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokyo23/news/20121108-OYT8T00099.htm
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 地鎮祭などの神事や神棚に欠かせない榊(さかき)。家業の花屋の仕事を通じて、地元で長年放置されてきた山林に榊の木が群生していることに気づき、国産榊の生産に青梅市内で取り組む青年がいる。障害者を積極的にアルバイトに雇ったり、山の地権者と共同で遊歩道を整備したりと、多角的に地域に
貢献している。
天然榊を生産・販売する「彩の榊」(青梅市富岡3)を経営するのは、隣接する埼玉県飯能市出身の佐藤幸次さん(33)。会社の設立は、東日本大震災前日の2011年3月10日。「会社はもうダメかと思った」
せめて榊の卸し先の花卉(かき)市場の手伝いが出来ないかと、同月下旬、車にガソリンを200リットル積み込み、東北各県を回った。その時、東北では国産榊を求めている農家や漁師が多いことや、主な生産地が福島第一原発がある福島県浜通り地方だと知った。佐藤さんによると、同地方の榊生産は
、原発事故で住民が避難したり、放射性物質の影響を受けたりして壊滅的な状態になったという。
東北の市場関係者は「東京や埼玉で榊が採れるのか?」といぶかったが、実物を見て、「ぜひ出荷を」と仕事の依頼が舞い込んだ。
佐藤さんは、高校卒業後、飯能市内の実家の花屋を継ぐため両親と一緒に仕事をしていたが、祖母の墓がある山の奥で一面に榊が生えているのを見つけて驚いた。
飯能や青梅周辺の山は江戸時代から良質なスギやヒノキの建材の採取場だった。だが、近年は国産材の価格が暴落し、山は手入れもされず低雑木の榊が広がったのだ。これを何とか生かしたいと、山林の主要な所有者である鉄道会社に粘り強く訴えること13回。一緒に遊歩道整備をすることを条件に
採取が認められた。
同社は、飯能市内の障害者の作業所に榊の葉の水洗い作業を委託するなど、障害者との連携にも積極的。佐藤さんは「小さい会社だが、雇用や農林業の活性化を通じて地域を元気にし、日本文化の良さを伝えたい」と意欲を燃やしている。
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