v10.0
- ID:
-
23283
- 年:
- 2012
- 月日:
- 0124
- 見出し:
- 砥部のカシ 岩手で漁具に
- 新聞名:
- 読売新聞
- 元URL:
- http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/ehime/news/20120123-OYT8T01190.htm
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 東日本大震災で津波被害を受けた岩手県大槌町で、冬場のアワビ漁に欠かせない漁具「ソウ」が流され、砥部町の林業経営者らが原材料のカシの木を大槌町のアワビ漁師たちに贈った。今季は漁の実施が危ぶまれていたが、新しいソウを作って出漁。見知らぬ人々からの支援に、漁師たちは「遠い四国か
ら窮状に思いをはせてくれた」と感謝し、前を向いている。(奥原慎平)
岩手県はアワビの漁獲高が全国一。大槌湾でも古くから漁が行われてきた。ソウは長さ2~4メートル、直径3センチのカシの棒の先端に鉄製のかぎ針を取り付けたもので、船上から箱眼鏡で海中をのぞき、湾底のアワビを引っかける。地元の漁師によると、プラスチック製もあるが、カシ製は堅くて海塩の腐
食にも強く、重みがあるため水中に差し込みやすいという。
漁師たちが使っていたソウは30~50年前に作られ、祖父や父から引き継がれてきた。しかし、津波で大槌漁協所属の漁師約800人のうち100人が命を落とし、漁具の倉庫とともに同町内のほぼすべてのソウも失われた。
岩手県大槌町の漁師にカシを贈った石田さん(砥部町で)
東北地方に温暖な土地で育つカシはほとんど見られず、地元での入手は困難だったが、昨年7月、砥部町の林業を営む石田東洋子さん(54)が、今治市内の知人から大槌町の現状を聞き、「山と海との違いはあれど、自然をなりわいにする者同士」と支援を決意。愛媛でもカシの木は希少というが、薪(ま
き)用に石田さんが蓄えていたホンガシ3本分(約1トン)を提供することにした。
カシはその堅さから、製材の刃が欠けるほどだが、石田さんの仲間の製材業者や運送業者らは「復興の一助になるなら」と、無料で製材や輸送を引き受けた。木材は現地の製材所で、約40本のソウに生まれ変わった。
同町内でアワビ漁に従事していた漁船約300隻も大半が流され、修理したり譲ってもらったりして約20隻を確保。11月17日に念願の漁が解禁され、漁師約50人が新しいソウを手に漁にいそしんだ。
今季は稚貝が流されていることもあり、昨年末までで従来より2回少ない5回で終了。漁師たちは返礼として、石田さんらにアワビを送った。初日に約30キロを水揚げした小笠原孝則さん(58)は「最高のソウだ。堅さも十分で折れたり曲がったりしない。大切に使っていくよ」と話し、再びソウを使う5月のウニ漁を
心待ちにしている。
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