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- ID:
- 23271
- 年:
- 2012
- 月日:
- 0123
- 見出し:
- コスト削減 経営陣正念場
- 新聞名:
- 読売新聞
- 元URL:
- http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tottori/news/20120120-OYT8T01267.htm
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- 記事内容
- 林業の振興と地域の雇用創出のために、日南町が出資する木材加工会社「オロチ」(森英樹社長)の債務が約10億円に上り、経営の危機に陥っている。同社は町に1億円の融資を求めたが、町議会から「経営陣の努力が見えない」などと批判が相次ぎ、町が13日に提案した融資のための2011年度一
般会計補正予算案は否決され、資金繰りのめどが立たなくなった。同社は県中小企業再生支援協議会の支援を受け、立て直しを進めていく方針で、今後、経営陣のかじ取りが注目される。(大橋裕和)
島根、広島、岡山の3県に接する同町。広さ3万4000ヘクタールのうち9割が森林で、林業が主幹産業だ。同社は06年1月、町の森林を生かし、地元の雇用創出を図ろうと、町と町森林組合が1000万円ずつ出資するなどして設立。08年5月に操業を始めた。従業員約70人のほとんどが地元採用だ
。
同社は杉の間伐材に着目し、強度に優れた単板積層材(LVL)という建築材の加工を行っている。伐採した丸太をかつらむきのようにして薄い板にして、接着剤で何層にも張り合わせる。日本農林規格(JAS)にも認定され、商品価値が低かった間伐材を有効利用しながら地元の林業の活性化が期待された
。
しかし、実際に出荷をしてみると、乾燥させたLVLが湿気を吸収してわん曲し、ほとんどが返品になり、09年の春から4か月間、出荷を停止して品質改善に迫られた。張り合わせる1枚の板の厚さを4・2ミリから3・4ミリに改良したが、薄く切る分、張り合わせる板の数が増えたため、機械の稼働時間や接着
剤の使用量が増え、コストが拡大した。
東日本大震災の影響で、被災地の復興に伴う住宅建設などで木材の需要が伸び、11年9月期の売り上げは約7億円、前年同期の約3億円から大幅に増えたが、コストが約7億3000万円と売り上げを上回り、負債が約10億円に膨れ上がった。
同社によると、債務が増えても役員9人の報酬を下げるなどのコスト削減には取り組まず、昨年12月に20%の報酬カットを決め、町に1億円の融資を求めた。
増原聡町長は13日の臨時議会で「町民の雇用を守りたい」と融資する方針を示したが、議員からは「これまでコスト削減などの努力をしてこなかったのに、町の金を簡単に渡す訳にはいかない」「まず経営側が努力するのが筋だ」と反対多数で否決された。
同社の北垣芳貴・総務部長(51)は「コストを下げられなかったのは私たちの判断の甘さ。改良した製品で売り上げも伸びてきている現状を説明したが、理解が得られなかったのは残念」と肩を落とす。
震災後、木材の受注が増えており、同社は今後さらに売り上げが伸びると予想。12年9月期は売り上げ10億円を見込んでおり、生産コストの削減にも取り組み、収益増加を目指すとしている。
同社は16日、町や債権を持つ金融機関と話し合い、再生支援協議会に支援を求める方針で一致。同協議会が企業再生の専門知識を持つ弁護士や公認会計士などのスタッフを組織し、同社の再生計画を支援することになるが、再生計画の策定には半年かかるとみられる。
町は「再生計画を待って判断することになるが、地元の雇用にも関わることなので、町としては何らかの形で協力していきたい」としている。
北垣部長は「この冬がオロチにとって新たなスタートになる。少しでも経営状況を改善し、支援に理解してもらえるように結果を出したい」と話している。
■県中小企業再生支援協議会 県産業振興機構(鳥取市)が経済産業省からの委託を受け、中小企業の再生を支援する公的機関として、2003年3月に設けた。窓口相談と再生計画策定支援があり、オロチの場合は、弁護士らによる支援チームの協力を得て具体的な再生計画を練る方針。ほかにも、
金融機関との調整を行い、企業再生を後押しする。これまで245社の相談を受け、うち33社の経営再建にかかわった。
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