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- ID:
- 23080
- 年:
- 2012
- 月日:
- 0104
- 見出し:
- <国の未来像のヒント探る>幸せの国・ブータン
- 新聞名:
- 中日新聞
- 元URL:
- http://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2011123102000041.html
- 写真・動画など:
- なし
- 記事内容
- ヒマラヤ南麓にあり、九州ほどの国土に約七十万人が暮らすブータンは「幸せの国」と呼ばれる。三十五年も前に国民総幸福量(Gross National Happiness)の向上を政策目標に掲げて、国づくりをしてきたからだ。
お金やモノによる物質的な豊かさだけに頼らない「幸せの尺度」を独自に研究。公平で将来世代に負担を回さない経済発展や、多様な伝統文化の継承と振興、自然環境の保護、不正のない統治などに努めてきた。
近年の国勢調査では、国民の九割以上が「幸せ」と回答したという。経済成長の追求が必ずしも国民全体の幸福につながっているとはいえない先進国をはじめ、世界が南アジアの発展途上国が唱える幸せの価値観に注目している。
ただ、ブータンは「幸せ」とはほど遠い苦難の歴史を歩んできた。中世には、チベットから何度も攻撃され、植民地時代には英国との戦争で一部の領土を奪われた。近代になっても中国、インド両大国のはざまで外交的緊張が続く。特に北部山岳地域では、ブータン政府が主張している国境を越えて、中国
側が経済開発を強引に進める問題も起きている。
経済力に乏しく、隣国の脅威にさらされてきた国にとって、国民の幸福をどう実現するかは切実な課題。国をまとめあげるため、幸福の指標を国全体に浸透させてきたブータンでも、価値観の共有は年々難しくなっている。
みんなが貧しかった昔に比べて、貧富の差が目立ち始め、外国からの情報や物資が、人々の欲望を膨らませているという。今後、GNHの理念を未来のためにどう生かすかは、ブータンだけでなく、経済発展を遂げた多くの国々の課題でもある。 (林勝)
◆ブータンの国づくり JICA専門家・平山修一さん
タイ・バンコク駐在の国際協力機構(JICA)専門家で、GNHを長年研究してきた平山修一さんに、ブータンの国づくりについて聞いた。
ブータンがGNHを国づくりの基本にしたのには、近代化に依存しない幸福の価値観を国民全体で共有することが、国家を維持する上で必要だったという背景があります。
ブータンもほかの発展途上国と同様、近代化を目指してきた経緯があります。しかし、開発を急いで国土が荒廃し、治安や生活環境が悪化した隣国のネパールのようになるのを恐れたのです。
森林を開発して、木材と鉱物資源をお金にしてしまえば、一時的に生活は潤うかもしれません。でも、ブータンの森林は再生力が弱いので、一度破壊されると、昔から営まれてきた生活が成り立たなくなってしまいます。それで、「自分たちの制御できる範囲で開発を進めよう」と国民全体で考えを共有したよう
です。
新しく道路が開通した村の古老が「道路で確かに便利になった。しかし、車が通ると危ないから、一概に道路が良いものとはいえない」と語っていました。彼らは事業のメリットとデメリットを常に考えています。一元的ではないものの見方が、発展のバランスをうまくとる鍵なのではないでしょうか。
GNHの実践は、それほど難しいことではないと思います。未来の人々のことも考え、社会のルールを守って、一人一人が与えられた役割を果たしていくことから始まるような気がします。
そのためには、効率や金銭的なメリットばかりを追い求めるのはやめるべきです。ブータン人のようにゆったりと構え、物事を他人の意見ではなく、自分の頭で考えて判断するように心掛けていくのが良いと思います。
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