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- ID:
- 25412
- 年:
- 2012
- 月日:
- 1001
- 見出し:
- 三井寺の森、広葉樹へ“転生” 見直し「動植物と共存を」
- 新聞名:
- 京都新聞
- 元URL:
- http://kyoto-np.co.jp/sightseeing/article/20121001000028
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 湖国屈指の名刹(めいさつ)、三井寺(園城寺、大津市)が境内の広大な森林のあり方を抜本的に見直す指針作りに乗り出す。戦後の林業政策を受けてヒノキなどの人工林が大半を占めていた現状から、土地本来の特性に合った広葉樹などへの切り替えを積極的に検討する。「動植物と共存できる多様
性に富む森林に転換したい」という。
精進料理にも使われるミョウガなどの若芽が無残に食い荒らされている-。長等山一帯に甲子園球場約30個分の境内を持つ三井寺では近年、金堂(本堂)周辺の麓までシカやイノシシが現れ、被害が目立っている。
そんな現状を前に、僧侶たちは自問する。「果たして動物が悪いのか。経済性優先でヒノキやスギを植え、動物のエサ場となる自然な山の姿を奪ったのは人間ではないか」(福家俊彦執事長)。そんな反省に立ち、「長等山三井寺森林景観保全・再生ガイドライン」の作成を決めた。NPO法人森林再生支援
センター(京都市)に助言を求め、景観や防災面も考えた森づくりを長期的に検討し、推進する。
同センターによると三井寺境内は現在、約7割がヒノキ林、約2割がシイ林。ただ、地形や土壌を考えると、ヒノキに実際適した場所は2割に満たないという。同センターの高田研一常務理事(61)は「適した場所に適した樹木を植える『適地適木』の原則で、サクラやモミジなど多様な木への切り替えを検討し
たい」と話す。
林業が衰退し、森林の荒廃が全国的な問題になる中、京都市では東山の森林再生を官民で進める「京都伝統文化の森推進協議会」が5年前に発足し、植樹や間伐を進めている。三井寺でも植樹などを市民参加で進め、寺や森に親しんでもらう仕組みづくりを視野に入れる。高田常務理事は「有名社寺
が多く、人と自然の調和を追求しやすい京滋から森づくりの百年の計を示す」と理想を描く。(三好吉彦)
■三井寺 天台寺門宗総本山。7世紀創建。天智、天武、持統の3天皇の産湯に用いられた霊泉があり、三井寺と呼ばれる。金堂(本堂)や黄不動尊など国宝10件所蔵。近江八景の三井の晩鐘も有名。
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