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- ID:
- 25298
- 年:
- 2012
- 月日:
- 0918
- 見出し:
- 水豊かで緩やかな土地 処分場候補地を歩く
- 新聞名:
- 朝日新聞
- 元URL:
- http://mytown.asahi.com/tochigi/news.php?k_id=09000001209180002
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 高濃度の放射性物質に汚染された指定廃棄物の最終処分場問題で揺れる矢板市。候補地はいったいどんな場所なのか。17日、地元住民らの案内で同市塩田の国有林内に入った。環境省の説明通り、処分場を造成しやすそうな間伐後の山並みに緩やかな斜面が広がる。だが地下水の広がりは歩い
て見ただけではわからず、住民生活への影響やブランド木材として売り出している林業への風評被害を懸念する声が地元にある。
■林業 風評被害を懸念
矢板市中心部から国道461号と、塩田公民館の東を通る市道を車で走って候補地の国有林に向かう。収穫期を迎えた田んぼの間を抜け、舗装されていないでこぼこの山道を走る。
20分ほどのところで車を止め、山道の脇から候補地の東側に延びる林道を歩いた。林道を覆うスギやヒノキは市の「やいたブランド」に認証されている良材。案内してくれた地元森林組合の参事小川修市さん(58)は「風評被害が怖い」とつぶやく。塩田地区の約70世帯のうち半数以上が林業で生計を立
てているという。
林道を抜けると、大人の背丈より少し高いくらいの草木が一面に生い茂る。「ここからが国有林です」と小川さん。草木をかきわけて斜面を登ると尾根に着く。間伐と若い木の植林が進んでいて、周囲の山並みが一面に見渡せる。環境省は候補地選定の理由に、傾斜が緩やかなことと間伐で造成しやすいこ
ともあげており、小川さんも「急勾配が多い山地の中では緩やかな場所」と認める。
3日前に同僚記者が塩谷町側から山に入った時には、候補地から直線距離で約300メートルとみられる場所に民家を確認している。首都圏の人が別荘のように使っているという。
候補地の北東約1キロに市民の飲料水としても使われる寺山ダム、南東約2キロに農業用の塩田ダム、北西約3キロに国の名水100選「尚仁沢湧水(ゆうすい)」がある。塩田ダムは候補地の下流だ。
小川さんは「候補地の地下水は、寺山ダムや尾根を超えた地域にも流れ込んでいると地元では考えている」と指摘。環境省は処分場の安全性を訴えるが、「発端は安全安心と言われた原発の事故。信じる人なんていない」と話す。
候補地の地下水が地表に湧き出していると地元住民がみている場所にも足を延ばした。南に約6キロ離れた矢板市倉掛の「倉掛湧水池」。周囲の農家はこの湧水池から流れる通称「出川」の水を田畑に引く。
案内してくれた地元の農林業和氣邁(すぐる)さん(73)は、「国はこういうところも調査したのか。処分場の必要性はわかるけど、こんなに水資源が豊かな場所に作らなきゃいけないのか」と訴えた。
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