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- ID:
- 25292
- 年:
- 2012
- 月日:
- 0918
- 見出し:
- “北限”の250キロ先 ブナの大木悠々
- 新聞名:
- 朝日新聞
- 元URL:
- http://mytown.asahi.com/hokkaido/news.php?k_id=01000001209180004
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 黒松内→士別 昭和10年代移植、生き残る
ひと抱えもある大木に育った士別市のブナが、実は自生北限の地・黒松内町のブナの苗が植栽された木だとわかった。黒松内から士別まで約250キロ。ブナをめぐって専門家の話を聞く観察会がこのほどあり、士別市郷土研究会の佐藤公聰会長は「寒い士別でよく生き残った。黒松内とのえにしを感じな
がら大切に見守りたい」と話した。
ブナのルーツ探しのきっかけは、森林総合研究所道支所の松井哲哉研究員から道森林管理局森林技術センター(士別)の松本誠副所長に入った問い合わせだった。「道北には珍しい植栽ブナが士別にあると聞いているが、知ってますか」
松井さんは黒松内のブナ林を研究し、前職が黒松内森林事務所の首席森林官だった松本さんとは旧知の間柄。さっそく松本さんは士別市立博物館の水田一彦館長らと調べ始め、(1)士別には3本の大木がある(2)うち2本は昭和10年代に黒松内から苗木を持ち帰って植えたブナが育った――とわかっ
た。もう一本は戦後間もなく植えられた福島県産の苗が育った木だった。
黒松内がルーツの2本の持ち主の鈴木敏子さん(73)によると、太平洋戦争中に旧士別町の町長を務めた父親が、はっきりした時期はわからないものの、黒松内を視察した際に持ち帰ったブナの苗を士別市大通北4丁目の自宅の庭と東山墓地に植えたと聞いていると話した。
父親は宮城県出身。ふる里の山のブナを懐かしんで北限の地から苗を持ち帰ったらしい。
松井研究員によると、ブナは黒松内低地帯が自生する北限だが、植栽したブナは酷寒の地を除けば道北や道東でも育つという。
観察会は士別市郷土研究会が呼びかけ、士別小自然科学クラブのメンバー、市民ら約90人が参加した。
3本のブナの木をめぐって直径や樹高を測り、松井研究員や黒松内町ブナセンターから駆けつけた斎藤均学芸員、春木雅寛北大准教授らの話を聞いた。最も太く、大きかったのは鈴木さんの自宅のブナで直径80センチ、樹高17メートルだった。
鈴木さんは「父が植えたブナをみんなに見てもらえてうれしい。ブナはまだ80歳前後。200年以上生きると聞いているので、次の世代にしっかり引き継ぎたい」と話した。
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