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- ID:
- 24345
- 年:
- 2012
- 月日:
- 0522
- 見出し:
- 圧巻 立山杉、巨木の造形美
- 新聞名:
- 朝日新聞
- 元URL:
- http://mytown.asahi.com/toyama/news.php?k_id=17000001205210001
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 美女平 写真家 高橋敬市さんと歩く
芽吹き始めた木々、サルも現る
立山を撮り続ける写真家、高橋敬市さん(61)=立山町芦峅寺=と今月中旬、立山の美女平を歩いた。まだ雪が残る中、個性的な造形を見せる立山杉の巨木、芽吹き始めた木々、サルの群れ……。冬から春へと移ろう立山中腹の風景をカメラに収めた。
高橋さんは南国高知の出身。雪国への憧れから20歳で富山へ。剱岳南方にある山小屋、剱御前小舎で働きながら立山の写真を撮り始めた。「海から標高3千メートルまで、四季折々に変化する富山の自然は撮っても撮っても飽きない」と言う。
中でも立山杉は20年以上撮り続け、写真集も出している。「雪の重みで曲がりくねったり、数本が合体したり、どれも個性的」と、その魅力を語る。
富山森林管理署の調査によると、美女平かいわいには幹回り6メートル以上の立山杉の巨木が147本あるという。美女平―室堂のバスを途中下車し、称名滝が見える滝見台から美女平に向かって歩いて下った。
一帯の標高は約1000―1300メートル。快晴に恵まれたが、気温は12度ほど。ダウンジャケットを着込み森へ入る。地面はまだ雪に覆われている。登山者用の木道も雪の中。道らしい道はなく、高橋さんを信じるしかない。買いたての登山靴でザクザクと雪を踏みしめながら進んだ。
「巨木を見るには今が一番」と高橋さん。雪の重みが低木を押さえているからだ。スギやブナなど大きな木は見えるが、小さな木はごくわずか。雪が溶けて木々が起き上がってくると、巨木が茂みに隠れて見えにくくなるそうだ。
所々、雪の中から起き出した木々はみずみずしい新芽をつけていた。ムシカリ、ナナカマド、イタヤカエデ……。よく見ると新芽の形も様々だ。植物図鑑のような高橋さんの説明を聞きながらカメラを向ける。
目の前を駆け抜けたリスや声ばかり聞こえる鳥をカメラに収めるのは難しかったが、ブナ坂で出会ったサルの一群はゆっくり撮らせてくれた。新芽をむさぼるのに夢中で、カメラは気にならない様子だ。
立山杉の巨木は一本一本が個性的なだけでなく、角度によっても色々な表情を見せる。幹や枝がやわらかく、激しい風雪にも折れずいかようにも形を変えるのだという。
高橋さんが立山杉を撮り始めるきっかけとなった巨木に、美女平で出会った。腐食してぽっかりと空いたスギの穴を埋めるように宿り木のミズメが枝や根を絡め、複雑怪奇な造形を作り出している。支え合って生きているようで、強い生命力を感じた。
4時間かけて歩き回り、立山ケーブルカーの美女平駅にゴール。銀世界の巨木たちに圧倒され、下山後もしばらくは夢見心地だった。写真ツアーの問い合わせは高橋さん(076・481・1912)。
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