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- ID:
- 24055
- 年:
- 2012
- 月日:
- 0417
- 見出し:
- 原発汚染樹皮放射性物質漏らさず焼却吉田
- 新聞名:
- 読売新聞
- 元URL:
- http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokyotama/news/20120417-OYT8T00044.htm
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- 福島第一原発事故後、処理できずにいた汚染樹皮について、首都大学東京の吉田博久教授(都市環境学部)が放射性物質を大気中に漏らさずに焼却する実験に、福島県の研究施設と共同で成功した。一方で、実験で出た高濃度のすすと灰の保管方法が課題で、実用化のめどをつける夏までに、吉田
教授は「国と協議して道筋をつけたい」としている。(前村尚)
焼却実験は1月下旬、同県林業研究センター(郡山市)で実施された。汚染樹皮をまきストーブで燃やし、発生する煙を配管で水槽に誘導。その過程で煙は水に吸い込まれるようになっている。その後、煙が吸い込まれた水は数時間放置すると、黒いすすが沈殿してくる。今後、取り出す際は、フィルターで
濾過(ろか)する予定。
燃えかすの灰は掃除機で吸引して真空パックにして収容する。放射性物質はすすと灰に凝縮されるため、燃やしても、大気中への影響が出ない仕組みだ。
実験では、1キロ・グラム当たり約2万ベクレルに汚染されている樹皮と落ち葉の松葉約6・3キロを使用し、水道水1トンで洗浄した。1キロ当たり約50万ベクレルに相当するすす10~100グラムと、同50万~100万ベクレルの灰約140グラムに放射性物質が凝縮された。一方、洗浄に使われた水の放射
性物質の濃度は同100ベクレルと低いため、実用化後は再利用する。
開発のきっかけは、吉田教授が福島県の農家と契約して米を買っていたことだった。同大で放射線を使った研究をしていた吉田教授のことを聞いた県職員が昨年4月下旬、「製材過程で出てくる樹皮をどう処理したらいいか」と相談したという。
「震災で、科学者として役に立つことをしたい」と考えていた吉田教授は同年5月頃から、毎週末のように同県を訪れ、樹木や田畑の汚染状況を調査し始めた。
県林業振興課によると、県土の約7割が森林で、林業の従事者数も、最新の05年度統計で全国6位と多い。原発事故後、県内の製材所の屋外などに集められていた樹皮は今年3月末時点で約2万6000トンもあり、放射性物質による影響を考えて、樹皮を堆肥に転用できないでいる。
吉田教授は、9月頃まで調査を継続。その後、同県林業研究センターと共同で装置の設計を開始し、今年1月に完成させて実験に臨んだ。吉田教授は現在、灰の回収方法や水を再利用するための装置を開発中で、林業研究センターは、周辺環境への影響を慎重に見極めた上で、実用化を図る。
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